2016年6月25日土曜日

模擬授業3

湿気がすごくて嫌な1日でしたが、本日二人が模擬授業をしてくれました。回を重ねるにつれ、指導案も授業の要領もうまくなっていくのを見るのは嬉しいものです。また、自分の個性を生かす工夫がそれぞれ感じられて、これまでのどの模擬授業も見ていて参考になります。

この授業は、いかに授業を成功させるかというよりは、実際に教育実習に行った時に、あるいは、将来英語授業を中学校や高校で教えるにあたり、どのように授業を実践していくかのプロセスの基本を理解することです。うまく行ったか行かないかよりも、どう考え、どう準備し、授業の際にどう判断して、その後どう省察したか、です。みなさんのレポートに期待します。

さて、コメントです。

4 模擬授業4

K2先生、高校2年生のEnglish Communication2の授業を行いました。実際、多分学習指導要領が意図した内容にほぼ近い授業だったと思います。展開も、挨拶、復習、新しい学習内容の導入(語句、本文内容の確認)、コミュニケーション活動、まとめ、となっていて、典型的なものです。授業の流れはもう一歩でしたが、基本的には、「英語で授業をする」「英語で思考する」「4技能を総合的に扱って活動する」「考えを述べる」などがあって、良い授業だったと思います。

ただ、現実的には、もう少し丁寧な手順が必要で、それがないとうまく進行しないでしょう。進行しなくなると、日本語が使われ、従来の文法訳読に陥ってしまう可能性があります。要するに、K2先生の模擬授業はオーソドックスな授業なので、良い、面白い授業となる鍵は、生徒が英語を授業中にうまく使える環境を作ることです。英語が単なる学習言語ではなく、つまり、大学に行くためだけの知識ではなく、何かを学ぶための言語として機能しているかどうか。高校2年生ではそれが求められます。

高校生の英語の授業は、ヨーロッパなどで見ると、ほとんどがK2先生が目指しているような内容です。特に最後のWhen do you need to make a good choice in your life?などという質問は、確かに狙い通りで、答えを求めるものではなく、生徒にいろいろなことを考えさせる質問です。ヨーロッパなどでは、ディスカッションとかになるかもしれません。また、エッセイのテーマになるかもしれません。生徒は、この質問に答えるために、何かを読んだり、調べたりしなければいけません。

これは、いわゆるアクティブ・ラーニングにもつながるし、生徒にとっては、大学の学習や将来の仕事にもつながります。言語の学習は言語習得だけにとどまるようではあまり意味がありません。その意味でK2先生の教える姿勢は良いと思います。

教師は自分の個性を生かすべきで、誰かの真似をする必要はありませんが、望むべくは、明確でわかり易い指示でしょう。生徒の発言はよく聞いていて、やりとりも上手です。皆さんも指摘した通りです。授業がうまく行かないときは、だいたい指示が明確でなかったり、生徒に対する対応がいい加減だったりする時です。その点を注意すれば、K2先生の個性は生きるのではないでしょうか?真摯な姿勢は生徒によくわかります。時折見せる笑顔も好印象でしょう。

結構教師は合っている職業かもしれません。自信を持って取り組んでください。ありがとう。

5 模擬授業5

Y先生の授業は大変よく準備された内容でした。授業展開も落ち着いていて、教師になって活躍して欲しいと思いました。高校1年生の授業内容としては多少難しい部分もあったように思いますが、展開次第ではうまく行くのではないでしょうか?これからの英語授業は、ICTの機能を最大限に利用する授業が望まれます。教科書内容だけを教えているだけでは、生徒は満足しないので、教師は可能な限り多くの周辺の情報を提供することが大切です。その意味で多くの興味深い内容が盛り込んであり、生徒の興味を適切に維持していくことでしょう。

授業案の展開はK2先生と似ていますが、出てきたものはかなり違います。高校生になるとどうしても内容が深くなりますから、あまり英語英語ばかりにこだわっているのは面白くないです。その点で、writers without borders の内容に焦点を当て、文学や言語を興味深く扱いました。ドイツ語を例に出して、多様な言語学習に興味を持たせることは、高校1年生には適切で、教科書教材の趣旨からして良いことです。

言語材料の扱いですが、授業をするときは、4技能、文法、語彙、発音、文化、内容などについてどう扱うかを考えるとそれほど大きな失敗はしません。文法、語彙は比較的明瞭に示されることが多いですが、教師としては、どこに重点を当てるかがポイントです。ここでは、関係詞、分祠、The fact (problem, ...) is that という表現です。その他語句はかなり豊富ですから何をどう扱うかです。Part 3では、おそらく、私だったら、Part 1と2で扱われた文法をおさらいして、語句に焦点を当てるでしょう。but, yet, howeverなどの表現も大切ですが、その場合は、論理的な思考を促す意味で扱えば良いと思いますが、もっと他に多様な表現があります。これらの扱う言語材料は、4技能の活動や内容と関連しますから、これが正解というわけではなく、教師の意思決定に委ねられます。

この教師の意思決定(decision making)は、授業ではかなり重要なことです。すでにこの授業では5人の人が模擬授業をしましたが、かなり違います。同じ教材を扱ったとしても、異なった授業になることでしょう。これは教師の思考と密接に関連するからです。Y先生は、その意味からかなり細かい点まで準備していました。教師としてはこの準備にどれくらい時間や手間をかけるかが、授業の良し悪しを決定づけます。かなり時間がかかったと思いますが、結果は良かったと思います。

ただすでに授業中も指摘があったように、discussion活動の部分は実際の高校生には厳しいです。より丁寧なアプローチが必要です。ただし、これは実際に生徒を目の前にすれば、多分対応ができると思います。Y先生はそのような感性を持っていると思いました。落ち着きがあり、生徒が安心して授業ができる。そのような雰囲気を持っています。

前回は中学生で今回は高校でした。それぞれの学年でかなりアプローチは変わるでしょう。しかし、自分の個性は生かすべきです。人の真似をする必要はありません。ただし、英語の授業は、やはり、英語という言語がコミュニケーションとして使えることを目標にすべきでしょう。そのことを考えて、授業の目標は、英語の何がどこまでできるようになったかを常に考えることが大切だと、私は思います。

ありがとう。面白くなってきました。次回も期待です。

乱筆乱文ご容赦ください。




2016年6月19日日曜日

模擬授業2

今年は人数が少ないこともあって、私の指示が不徹底だったようです。ここで補足しておきます。

まず指導案は、指導案テンプレートをこのページに貼り付けておきました。ちょっと簡潔すぎたのと、説明が不足したようです。次のことを考えて作成してください。


  1. 必ずしも指導案テンプレートにすべて従う必要はありません。「指導案はこのように書かなければいけない」ということはありません。
  2. 指導案は、1のことを考えて、指導案を見たら、どんな授業になるのかわかるように書いてください。教師の指示、生徒の発話、活動内容、言語材料、評価方法など。
  3. 英語で書く必要はありません。(もちろん書いても良いですが)
  4. 一応英語で授業をすることを念頭にして、指導案には英語使用の例を具体的に書いてください。
  5. 指導案は、教育実習の研究授業を意識しての練習です。不明な点があれば質問してください。
授業は、やはり「コミュニケーション能力の育成」で、「英語の授業は英語で授業をする」という方針を理解して展開してください。

では、コメントです。

2 模擬授業2

U先生は、中学校2年生の授業をしました。自分では文法を中心とした授業を受けたことがないということで、U先生がイメージした文法学習の活動を模擬授業で選んだようです。英語はおそらく問題なく、美声でよく通る声ですので、中学生に話すときは、少し明確にゆっくりと話すとよいでしょう。指導案については上記の通りです。今後よく学習してください。

50分のうちどこを模擬授業とするかで少し悩んだようです。いくつかの活動をスキップして、「ここはこのように展開したと仮定して」ということで指導案のある活動を選んで模擬授業として展開しました。これは、意外と難しく、教育実習での実際の授業ではそうはいかないことと、授業は流れなので、やはりある部分を通してやった方が授業の流れは掴みやすいでしょう。

大学で行う模擬授業はプレゼンテーションとは違います。やはり、重要な課題は生徒とのやりとり(interaction)です。プレゼンテーションとなると、ただ話し、説明すればよいなってしまいます。実際に展開はそうなってしまいました。これは、指導案を考える上で、生徒の学習活動や言語活動を具体的にどうするかを想定すれば、一人で一方的に話すということはなくなると思います。

文法の指導にこだわったということなので、文法指導について触れます。Grammar teachingは英語教育ではやはり最も重要な指導です。が、U先生は文法指導は、塾とか受験指導とか一般に市販されている学習文法書からくる「思い込み」が強いのではないでしょうか?現在の主流は、前のブログでも触れましたが、CLTの枠組みで実施されるgrammar teachingです。接続詞とは?という説明ではなく、接続詞はどのように使われ、どう使うかということを、PPPで展開することが伝統的なCLTの指導法です。

チャレンジするということであれば、このような展開を頭において、文法指導を、文法理解が実践的に進むような活動にして、考えるべきだろうと思います。学習文法書などで説明されていることはまちがってはいませんが、目の前に中学生や高校生がいたときには、いかにわかりやすく指導するかが大切です。説明や文法ドリルだけでは必ずしもわかりやすいとは限りません。コミュニケーションの場面を想定して、実際に使用される場面を提供することにより、理解は促進されます。

英語授業は、「教える、説明する、問題をやる」と考えると、あまり面白い授業にはなりません。生徒が喜ぶのは、英語を使ってコミュニケーションすることです。ごく普通の公立学校の生徒は英語に触れることがかなり少ないので、授業ではその機会を可能な限り作ることが大切です。また、情報を整理してわかりやすく提示することも大切です。「予習しているからわかる」「すでに習ったからわかっている」では、親切ではないかもしれません。

U先生は、よく考えていて、とても親切なので、ちょっと観点を変えるだけで十分良い授業を展開できると思います。ますます研究してください。ありがとう。

3 模擬授業3

K先生も中学校2年生の授業でした。が、アプローチが違いました。K先生もとても親切で教具や教材をよく準備しました。手作りというのは生徒はとても喜びます。プリント(handout)などよりもはるかに力があります。できる限り「手作り」はやってみてください。それと「本物(authentic)」も大切です。そういう気持ちを持ち続けると、教師としては多分大きく間違うことはありません。

指導案については、上で述べたとおりです。教育実習やこれからの模擬授業では改善してください。K先生は、ときどき面白いことを言っていました。それは結構大切です。例えば、Nursing homes use robots these daysという教科書の英語に対して、「実際は違う」ということをちょっと言っていました。このようなcritical thinkingはとても大切です。中学生もそう考えるかもしれません。

Ken says, "Nursing homes use robots these days." My mother is working at a nursing home, but it doesn't have any robots. She is very busy and has a lot of things to do there. She wants robots or more people. She wants to have robots.

など、英語でさりげなく言ってみたらどうかと思います。教師が普通にやさしい表現を使って英語を使えば生徒は英語に触れて、英語を使う気になります。

指導案を見る限りでは、PPPが意識されていたようですが、実際の授業ではそのあたりがうまく展開していませんでした。これはやはり授業を流れ(procedures)と捉えて練習を重ねることが大切です。教育実習では、その流れを学ぶことが主になります。特に英語を使って授業をするということを前提にすると、それが教育実習の大きな目的となります。

U先生と同様、模擬授業でもその展開を一通りやってみる必要があったと思います。ただ、授業はとても工夫してやっていました。これは必ず次の授業に生きます。実際に本日やった授業を、英語でするという前提で、もう1、2回通してやってみると、問題がわかって改善され、結構うまくいくと思います。

特に、want to doは説明したり文法ドリルをするのではなく、実際のコミュニケーション活動を生徒がすることで簡単に定着するはずです。読み、聞く、話す、書く活動を授業でタスクとして入れることです。簡単に言えば、教科書にあるPracticeを展開すれば良いのです。

さいごに、語句の導入ですが、語句の指導の基本は3つです。意味、スペル、発音です。これは丁寧に指導することが大切です。フラッシュカードを作成したのは良かったのですが、その活用の工夫が大切です。

語彙の提示 ⇨ 語彙の理解 ⇨ 語彙の練習 ⇨ 語彙の使用

これがコミュニケーション活動として展開する必要があります。

乱筆乱文であちらこちらに間違いがあると思いますが、ご容赦ください。笹島のメモとして、皆さんがレポートを書く際の参考にしてください。







2016年6月12日日曜日

模擬樹業1

今年は、例年の授業と違い、形式も内容も変えました。理由は、人数が少ないことと、実施時期が違うということです。そうすると不思議なことに、同じことをしているつもりでも、結果はかなり変わってしまうようだと思います。

まず、一つは、指導案です。指導案は「授業をどう展開するのか?」という計画書です。細かく設定しておく必要があります。特に、初期段階の場合は、実際にシミュレーションする必要があります。ぶっつけ本番は危険です。なぜかと言えば、生徒にとってはその授業は一度きりで貴重な時間だからです。

英語授業の基本的な構成は、別のところに書いてありますが、下記の通りです。指導案はもちろん日本語でかまいませんが、ここでは英語で説明してあります。同じです。

Lesson structure
Basic teaching procedures for one lesson
導入
1 Greetings / Attendance
2 Warmup activities
3 Review work
展開
4 Introducing today's learning points
4.1 Presentation of key points (sentence structure, grammar, culture, topic, etc)
4.2 Vocabulary (words and phrases)
4.3 Practice for understanding (repetition, etc.)
4.4 Practice for use (interaction, etc.)
4.5 Listening to and reading the text (reading aloud, etc.)
4.5 Checking comprehension (Q and A)
5. Production activities
整理
6. Consolidation (summary, note taking, homework, etc.)

その点を考慮して、模擬授業1にコメントします。

模擬樹業1

I先生は、元気があり、気持ちがあり、力があり、教師としては望ましい人だと思いました。教師にになればおそらく良い先生になることは間違いないでしょう。正しい、授業に関して強い自分が経験した教師像があります。それは、教師というのは「教える人」「英語の勉強は、扼すこと、文法を理解すること、英語が使われる背景を説明し興味を持ってもらうこと」などなどです。どれも大切なことで、日本の多くの英語教師(特に高校の先生)が実際やっています。

しかし、英語の授業はそうであってはいけないということを、多くの英語教育のリサーチが示しています。ぜひそのことを理解してもらいたいと思います。多くの文献があります。ぜひ勉強して欲しいです。一例に次のような文献がウェブにあります。

Communicative Language Teaching 

さて、授業はとてもテンポが良く、目標も明確でしたが、生徒役の人が指摘した通り、英語の授業?という疑問です。英語の授業の目標は、「コミュニケーション能力の育成」です。さらには、中学生であれば、英語力の到達目標は、CEFRでA1です。

A2
Can understand sentences and frequently used expressions related to areas of most immediate relevance (e.g. very basic personal and family information, shopping, local geography, employment). Can communicate in simple and routine tasks requiring a simple and direct exchange of information on familiar and routine matters. Can describe in simple terms aspects of his/her background, immediate environment and matters in areas of immediate need.

英語の授業の基本は、これを育成するための「活動」を行うことです。その活動ををどう工夫するかです。そのために教師は英語を使い、生徒を英語に触れさせることです。

しかし、I先生はとても面白い観点で英語授業をしました。それは教科書が扱っている題材内容、背景です。アメリカの黒人差別(公民権)という問題です。Martin Luther King Jrを取り上げています。私だったら、模擬授業では、取り上げた次のパートを扱います。活動しやすいからです。また、同じ場所だったら、もうちょっと具体的に事例をあげて、現在も起きている問題から、英語でやりとりしながら導入します。その際には、相当の教材研究をして素材を調べて、使える英語を整えて丁寧にやります。

I先生は実際そこまでの準備をしていないと思います。教育実習ではぜひ生徒のために、英語を生徒が使える(学ぶ)授業をしてもらいたいと思います。

授業の際にも言いましたが、授業を作る観点はとても良いので、ちょっと変えるだけで英語授業を大きく変わります。その素養を十分に持っています。ただ単に教員免許状を取得するためだけに英語科教育法を学ぶのではなく、この機会に真剣に探求してください。それは必ず他のことにも役立ちます。

ポイントは、

1 生徒が英語に触れる・使う機会を作る
2 先生が日本語で説明する時間を少なくする
3 コミュニケーション活動を工夫する
4 文法や訳を指導することが英語の授業ではない
5 文化は説明するのではなく、考えさせる
6 多くのことを教えるのではなく、言語活動する機会を与える

です。ありがとう。考えさせる授業でした。