なし崩し的に始めてしまった模擬授業。しかし、4人の方はそれなりに努力してくれたと思います。いいところがたくさんありましたが、一方、少し甘く考えている面が見られました。これは、私の責任が大きいので、これ以上責めるのはやめましょう。おそらく、練習していないと思います。一度は必ず通して練習してください。そこで他の人の意見を参考に工夫してください。多くの失敗はそこで気づくはずです。
これからなんとかみなさんが少しずつ英語授業についての考え方を理解していただきたいと思いつつ感想を述べましょう。長くなりますが、よく読んでください。
不思議なものですが、先生の「やる気」が他の人に影響します。先生が元気がないと、全体に伝わります。不思議ですが、影響を与え合います。たぶん、なんとなくどうしてよいか分からなくて模擬授業が始まってしまった感じでした。
1IS先生の授業
トップバッターで多少とまどいもあったようですが、よい雰囲気で始めました。中学校3年生の授業でした。指導案に「〜について知る」とありました。ここにこの授業の目標のあいまいさが出てしまいました。それがすべてです。目標はもっと具体的にしなければいけません。そのために授業全体が何をしているのか分からなくなりました。もっと準備をしっかりとしなければ授業はできません。「その場でなんとかなるだろう」という考えは危険です。また、指導案がその模擬授業のためだけに作成されたことも失敗の原因でしょう。計画がきちんとしていなければ、絶対にいい授業はできません。
ただ、IS先生の人柄の良さがよく出ていました。いい先生になると思います。生徒と自然なやりとりをしようとした姿勢がとてもよかったと思います。これはぜひ生かしていただきたいと思いました。英語の授業ではとても大切なことだと思います。自然に英語を使ってコミュニケーションをする。それが生徒にも伝わることが大切です。また、IS先生は、題材内容について焦点を当てようとして交換が持てました。生徒に興味をしめしてもらいたい、生徒に考えてもらいたい、生徒に意味のある活動をしてもらいたい、というような、教師としては重要な観点をもっていることがよく分かりました。これも重要です。
少し細かい点を指摘しておきます。ビデオを見てもらうとよく分かりますが、生徒が活動していません。中学生に「Any questions?」を尋ねても、おそらく質問は返ってこないでしょう。生徒が分かっているかどうかは、先生が生徒に具体的に英語で質問して、それに応えられたら分かっていると考えましょう。そのような生徒とのやりとり(interaction)があまりありませんでした。生徒とやりとりをすることが英語授業の基本です。その点をちょっと工夫するだけでIS先生の授業は劇的に変わります。
失敗の原因の多くは、私の指示によるところが大きかったようです。もう少し指導する時間があればよかったのですが、ごめんなさい。それでも、「授業をこんな風にしたい」という意欲は伝わりました。その意欲が大切です。それと、「これだけは教えたい」という目標の明確化とそのための準備は決しておろそかにしないことです。それさえしっかりと心がければよい授業ができると考えます。期待しています。
2YS先生の授業
IS先生と同じ題材を教えました。いろいろなことを試してみようという姿勢がありました。ただ、目標にある「正確に訳せる」は果たして必要でしょうか?ある面ではたしかにないがしろにできない技能ですが、中学生には多くの場合あまり要求しすぎてはいけないことのようです。英語の先生が「訳す」ことにこだわりすぎるために「英語ができるようにならない」という批判は根強くあります。Collocationに焦点を当てることはとてもよいことですが、授業ですることはそのcollocationの題材を多く提供することです。説明するのは簡単ですが、実際のcollocationの例を集めて提示することはけっこうたいへんです。その労を惜しんではいけません。
Pair work やcollocationや手紙のワークシートを作成し、授業で利用するのはよいことです。ぜひやってください。ただ授業で実際に利用してみて分かったと思いますが、それを使って、どうコミュニケーション活動や言語活動をするのかを考えてください。問題を出して、それを生徒が解くという活動は、あまりおもしろくありません。生徒がワイワイとしません。生徒は英語を使ってコミュニケーションをしたいのです。'Do you like sweets?' - 'Yes, I do.' 'What kind of sweets do you like best?' - 'I like chocolate best.' How often do you eat chocolate?' - 'I eat chocolate every day.'を会話としてできるように、具体的に示す必要があります。
次のように提示して、一度きちんと練習して、実際にやりとりする場面を与えると効果的です。
A: Hi, Yumi, do you like ( sweets )?
B: Yes. I like ( chocolate ) very much.
A: Really? What kind of ( chocolate ) do you like?
B: I like ( Godiva ) best.
A: Wow! It's ( expensive ). How often do you eat ( chocolate )?
B: I eat chocolate ( every day ). How about you? Do you like ( sweets)?
このような会話のやりとりを実施する場合は次のステップを取ります。
例を見せて → 練習(リピート)して → 必要な語句を示して → 実践する
これは、コロケーションの場合も手紙の場合のタスクでも同様です。この点をよく考えてください。
YSさんのアイディアは正しく、授業する場合にはとても大切なことです。しかし、「さあ、やってみて」はうまく行きません。だれにとっても成功体験が重要です。成功すれば意欲が湧きます。失敗すると多くの人は意欲を失います。程度がありますが、多くの場合は「失敗することで恥をかきたくない」のです。特に思春期の時期はそうです。アイディアを生かすために工夫が大事です。工夫をするということは時間がかかります。時間をかけない工夫は、あまりよい結果を生みません。また工夫を重ねることが経験となります。教師の仕事の多くは経験です。最初からうまく行く人はいません。また、工夫をしないで自分の考えだけで同じことをくり返す人も多くいます。生徒がそれで満足すれば、それは正しいですが、そうでない場合は、失敗でしょう。
生徒に支持される教師は、その努力を積み重ねることです。反省のない人に進歩はありません。また、アイディアのない人にも進歩はありません。その点YSさんはよいアイディアを持っています。「いい授業をしよう!」という意欲もあります。あとは工夫と経験です。ペアワークやコロケーションや実際に英語を使用する場面を取り入れることはとてもいいことです。そのためには工夫が必要です。がんばってください。
3BB先生の授業
BB先生の授業に対する姿勢はとてもよいし、私も支持します。特に、実際に「手話」を授業に取り入れることは生徒の関心を高めます。その場合、もう少し教材研究をしておくべきでした。しかしいくらがんばっても予想もしない状況におちいることがあります。その場合、生徒の質問の発想、気づきを尊重しましょう。自分が準備していなくてもそのことに気づく生徒はすごいと思い、ほめることです。生徒が興味を引くことを取り入れる。ぜひそれを続けてほしいと思います。
それと指導にあたっては効率性を考えましょう。指導案の目標に、受動態が示されていました。これとsign languageを結びつける方法はなかったでしょうか?それから教科書の中に、
Their musicals are performed in sign language.
とありました。たとえば、
Do you know sign language?
I will show you some words in sign language. Please guess it.
おはよう
This means おはよう in Japanese. It is performed in sign language.
How about this?
さよなら
Yes. These gestures are performed in Japanese sign language. How about English sign language? ....
などと展開してはどうでしょうか?時間は限られているので、授業の組み立てをうまく工夫することが大切です。考えてみてください。目標をしぼって、教科書の題材を最優先して、それをただ説明するのではなく、体験させて、気づくようにすることです。その気づきがあったとき、「学び」が起こります。気づいたら、それを実際に使えるように練習する機会を作り、練習し実践させる。「手話」を動作を使って経験させたようにすることです。
BB先生の授業にはとてもよい内容が含まれていました。ただ授業の構成が、IS先生とYS先生と同様にはっきりと構成されていませんでした。英語の授業は、
× 導入 ー 展開 ー 整理
◯ 挨拶/復習 ー 新教材への導入 ー 教材理解 ー 練習/活動 ー まとめ
です。手話や新出語句の提示などていねいにしていたところはよかったですが、全体のつながりが反省材料でしょう。
BB先生も、ていねいに教えようとして、とても真摯な姿勢があり、いい先生になると思います。ただ、ちょっと準備が不足していたと思います。
4NK先生の授業
生徒とのやりとりが上手にできたと思います。教えたいことややってみたいことも明確でよかったでしょう。やりとりがうまく行くと授業も活性化します。それがよく出ていた授業です。内容的に、英語ですべてやりとりしてもほぼ問題なく授業ができる展開でした。ただ、もう少していねいな計画が必要だったと思います。活動の一つ一つのつながりが少し分かりづらい授業でした。文法的なポイントは、how to do, what to doの使い方です。なんとなく意図していることは分かりますが、教科書の内容と手紙とのつながりも少し分かりづらかったので、実際に中学生に教えると、混乱するでしょう。中学生にはやはりていねいな指導が大切です。
日本の観光案内ということで構成してあるので、そのあたりをスムーズに進める必要があったようです。友達からのメールを紹介して、観光に結びつけるのはよいアイディアです。身近なところから題材に接近することは今後も続けてもらいたい姿勢です。さらに、NK先生の人柄からか、明るい雰囲気で授業ができました。これはとてもよいことです。生徒も元気が出るでしょう。元気が基本です。元気を出して、英語授業の世界にまず引き込まないとうまくいきません。
そのためには、さらにていねいな計画が必要です。授業は、まず、教科書に出てくる内容について「学ぶ」ことを基本に考えなければいけません。
生徒に説明したら、「分かる」とはなりません。山本五十六は言いました。
「やってみせ、言って聞かせて、させてみて、 褒めてやらねば人は動かじ」
説明≠分かる
ここでは、what to do と how to get tickets が指導目標です。これはていねいに導入しなければなりません。その後に、メールの読み、返事を書くとなります。15分という短い時間で多くを盛り込もうとしたために、そうなったと思います。実際の授業ではそのあたりをしっかり考えれば、この授業は大成功でしょう。NK先生の授業はいい要素が一杯入っていました。ぜひていねいさを心がけてください。いい先生になると思います。
まとめ
4人の先生には、多少批判的になりました。最初に言ったように、これは私自身への反省でもあります。模擬授業にあたって再度言っておきます。次の点に注意して授業をしてください。
1 指導案の目標は明確にしてください。何を15分の中で具体的に教えるのか?
2 実際に一度通して一緒のグループの人の前でやってください。
3 教科書で扱われていることを教える。
以上です。次回期待します。
乱筆乱文ご容赦ください。