回数を重ねて、少しずつ授業展開もよくなってきました。いままで模擬授業をした人の努力が少しずつ実り始めてます。重ねて言いますが、模擬授業の目的は、「うまくやること」ではありません。ポイントは、
模擬授業のためにどのように準備して、授業を実践する中でどう考え、終ったあとにどう考えたか
ということです。模擬授業を実施している間に、その人がどう考えたか、何を学んだかで、この授業の価値が決まります。観察(observation)と省察(reflection)を期待します。
さて、私のコメントです。
8 IN先生の授業
高校3年生の授業でした。高校3年生というとどうしても大学受験とかを意識した内容にならざるを得ません。その意味で、リーディング技能に関する授業はさまざまに重要でしょう。しかし、「読んで訳す」という活動は、必ずしもリーディング力につながりません。「読む」ということをもう少し考えたほうがよいかもしれません。「読む」という活動は、ことばの授業では基本的な活動です。単純に次のように整理できます。
◯ 読んで、聞いて → 話す、書く
しかし、次のような活動は、学習としては必要ですが、不自然です。
× 文構造を理解し、日本語に訳し、音読する
IN先生の授業では、教科書に入る前の部分で15分を使ってしまいました。ですから、読むという活動はここでは特にコメントしないことにします。
模擬授業での展開は、略語に関する活動でした。UNHCRが登場するまでに15分かかるということはちょっと授業全体の構成からすると問題かもしれません。が、着眼点はよいと思います。授業全体の雰囲気も明るく、実際に教育実習で授業する場合も、よい授業ができると思います。
UNHCR (the United Nations High Commissioner for Refugees)はけっこう重たい略語です。私が授業するとしたら、やはり、内容となる国連と難民のことに焦点を当てるでしょう。それから、緒方貞子さん です。生徒もその点が一番気になるはずですし、学びたいポイントとなります。
授業をする場合には、目標(ねらい)をいつも考えるようにすることが大切です。「生徒がおもしろがるから、歌をとりあげよう!」と考えた場合、その歌が、その授業の目標とどうかかわっているのかを整理しておかないと、生徒は混乱します。
IN先生の授業では、声も元気がよいし、よい学習環境を作っているし、教え方などには問題は何もないのですが、何を生徒に学んでほしいのかという点があいまいでした。教材研究として、UNHCRの活動や緒方貞子さんを理解しないで授業に望んだとしたら、たいへん危険です。指導案にはそれが示されていませんでした。教材を見て、何をどう教えるか、考えることが大切です。
9 YS先生の授業
授業のあいさつのときに、一人ひとりの生徒と挨拶のやりとりをする姿勢はとてもよかったですね。なかなか時間を取れないですが、授業の最初はとても大切です。先生にとっては40人ほどの生徒をまとめて考えてしまいますが、生徒一人ひとりにとっては、先生は一人です。授業時間に全員の生徒となんらかのコミュニケーションを図れることは理想かもしれませんが、大切です。YS先生はそれをやろうとする姿勢がありました。
さて、YS先生の授業は、中学校3年生です。成長過程でいちばんむずかしい時期ですが、英語を教える上ではやりがいのある学年です。文法は現在完了を扱っています。復習活動で、その活動をしました。しかし、習ったこととこれから習うことの整理が明確にできていないように思いました。Have you ever heard 〜 ? は、復習活動だという設定でしたが、語句の導入があり、その確認活動がありました。この展開は、ちょっと整理されていないようです。
復習活動(文法、語句、テキストなど)
→ 分かった!
→ 新しく学ぶ内容(文法、語句、テキストなど)
と展開するのが基本です。
語句のワークシートは工夫がありました。が、すこし時間をかけ過ぎたと思います。もっとさらっと行い、教科書内容に入ったほうがよかったでしょう。
YS先生は、授業にまじめに取り組みました。それぞれの活動は工夫の跡が見えます。とてもよいと思います。しかし、英語の授業に対するイメージが、たぶん、文法や語句を学ぶことで、それがテストされ、評価される、というようなもののようです。英語授業で、生徒が英語を使ってコミュニケーション活動をするということが、明確ではないのだと思います。あるいは、分かっているけれども、どうやってよいのか分からない、ということのようです。
英語の授業の目標は、英語のコミュニケーション能力の基礎を養うことです。最初の合いさつの場面では、それがうまくできていました。その後も同じような姿勢で授業を展開するとよい授業になると思います。教科書内容を教える、現在完了を教える、のではなく、教科書内容や現在完了を使って、コミュニケーション活動ができるように、授業展開を工夫することが大切でしょう。
10 MU先生の授業
MU先生は、中学校2年生の授業でした。授業のはじめは、よく工夫されていました。いわゆる「Oral Interaction」に近い活動です。特に、場面設定がよくできていました。個人的には、このような英語を使う場面をうまく設定することが、教師としての良し悪しを決める要素となります。また、この場面設定が、その授業のアンカーとなるようにしておくと、その授業の柱ができて、とても安定した学習環境を提供できることにつながります。その点、MU先生はよく考えていました。
指導案も、自分自身にとって分かりやすく、無駄がなく、余分な飾りを排除してあって、的確です。研究授業などでは、多くの人に見てもらうことになるので、ある程度説明も必要になりますが、基本はOKでしょう。
教科書の題材はシンプルで、本来であれば、あまり余分なことはせずに、教科書にそった活動を的確にやれば授業は成立するし、あまり失敗もない内容です。ただ、MU先生はそれではおもしろくないと考えたと思います。そのようなチャレンジ精神が、教えることでは大切です。それに、そうでなくては、教える仕事に喜びを見いだせないでしょう。
ただ、ちょっと気になったのは、学習者がどこまで習っていて、どこが学習のポイントなのかを明確にする必要があります。ビンゴなどの活動とコミュニケーション活動を組み合わせるときに、その点についてはきちんと整理して考えておく必要があります。そうしないと混乱するかもしれません。教えることで大切なことは、まず、
ていねいさ
次に
分かる
おもしろい
興味関心
などと続くでしょう。
短い時間ですが、MU先生がやろうとしたことは評価できます。
11 MR先生の授業
やはり、ていねいな指導が大切だと思いました。MR先生の人柄でしょうか?「Thank you」がとても多く、授業の印象がとてもよかったと思います。全体的にも、構成や手順などていねいでした。授業の進め方はよかったと思います。ただ、板書は工夫したほうがよいでしょう。これはMR先生に限ったことではありません。板書は、その場で考えて書くということは、教育実習などではやめたほうがよいです。何をどう書くかは、あらかじめ確認しておく必要があります。スペルなどの間違いはできるかぎりしないように努力することはもちろんですが、板書や教材を準備することが、結局、教材研究であり、授業準備です。これをきちんとていねいにやっておくことが最も大切でしょう。
ただ、ちょっと気になったことは、文法項目をただ説明したことでした。これは工夫がありません。その前後の活動からするとそこだけ浮いてしまったように思います。
説明する ≠ 教える
は以前に説明しました。「分かる」ようにすることが授業です。そのためには、どうすればよいでしょうか?ということです。
まず、興味を持ってもらう、刺激を与える、考える機会を与える、分かるように具体的な例を出す、経験させる、気づかせるようにする、などなど、授業で工夫することです。
たとえば、理科や社会では、日本語を使ってアプローチできます。英語授業でも日本語でアプローチすることももちろん大切ですが、できれば、「英語で」コミュニケーション活動などをしながら、英語を使いながら、英語が分かるようにすることが大切です。理由は、英語授業では、英語を使う場面を設定する必要があるからです。日本語で説明したほうが早いと考える人が多いかもしれませんが、それをしていて英語がうまく使えるようになるでしょうか?やはり、英語を使う環境を作り、英語を学ぶことが、中学校や高校でも必要です。
ワークシートはとてもよく作成されていました。ここのモデルダイアログをうまく利用するだけで、上記のことは解決できます。状況がある程度きちんとしていれば、生徒は分かります。分かったら練習をして(これはていねいにやっていました)、さらに、応用して実際にコミュニケーションしているという場面を作ることです。
真摯な姿勢は大切だなと、MR先生の授業であらためて思いました。
まとめ(ちょっと気になること)
ちょっと気になることがあります。全体的に教科書を教えるということを忘れているように思います。教科書の内容を学習することは生徒にはやはり大切です。教科書はつまらなく見えるかもしれませんが、よく作られています。教科書の内容を自分の都合のよいように変えて教えてしまうのは危険です。教科書内容を発展させることは大切ですが、関係のない内容ばかりを教えることは、実際に教壇に立って1年教えることを考えると、よほどうまくシラバスを作成しないとむずかしいことです。
いつも乱筆乱文で、すみません。
私が正しいことを言っているとは限りません。「教える」ことを考えましょう。いっしょに教えることを考えましょう。私はみなさんから多くのことを毎回学んでいます。ありがとう!