2012年12月18日火曜日

模擬授業第4回目

12 KK先生の授業

KK先生は、よく準備してありました。インドという内容と受動態という言語材料を教えることを目的としています。理想的には、この内容と言語がうまく統合されて授業が展開されるとよいと思いました。むずかしいことですが、いつもそのことを頭に置いて授業することは大切だと思います。英語の授業は、言語の授業ですから、英語という言語材料(語句や文法など)に焦点を当てるのは当然です。KK先生の授業は中学校2年生ですから、文法構造や語句をきちんと教えることが第1です。しかし、中学校2年生の多くは、それだけでは興味を持ってくれません。何か工夫をしなければいけません。その工夫の一つは社会や文化などの内容です。

インドという国は大きな国ですが、日本からすると誤解を持たれる国です。しかし、中学生の多くが関心を持つ国です。学習指導要領でもこのような文化については触れることが指示されています。授業のアプローチとしては、教科書の内容に沿っていてよかったと思います。しかし、英語でもう少しうまく展開できたのではないかと思います。なぜ先生は英語で話すことがよいかと言えば、理由は簡単です。英語によるコミュニケーション能力を育成するからです。先生が日本語ばかり話していれば、生徒は英語を使いません。英語ではむずかしいから日本語を使うという考えは、まちがいでしょう。

教科書には、

All these languages are spoken in India.

とありました。これがキーセンテンスです。ここではやはり話されている言語を具体的に出す必要があります。それとともに、受動態を指導できるでしょう。

People in India speak all these languages.

とどう違うのかを、場面を提示して指導することが大切です。「受動態は be + 動詞の過去分詞」で「〜される」という意味になると教えるだけでは、いかにも無味乾燥です。

KK先生は、とてもていねいに教えていました。教師としては見習うべき点が多々あります。ワークシートもていねいに作成されていました。しかし、英語の授業であれば、英語表現をもっと盛り込むべきでしょう。今日の目標は、

Where is India located on the map?
What notes are used in India?
What languages are spoken in India?

という質問をもとに、英語でやりとりできることとなります。

いずれにしても、KK先生の準備と努力は決して無駄にはなりません。手を抜けば、手を抜いたものにしかなりません。どれだけ手をかけて、効率よく授業をするかは、頭だけでは決して分かりません。体を使って、あれこれとやって、少しずつ分かってくることです。KK先生はその一歩を着実に進んでいます。

13 SG先生の授業

SG先生は多少乱暴で粗雑な点があります。しかし、これは決してマイナスばかりではありません。よい面をたくさん含んでいます。よい面は、多くの生徒の意欲を喚起する可能性があります。この授業で言えば、映画を題材として使ったことでしょう。また、冠詞ということに焦点をしぼったことです。おそらくSG先生が好きな映画であり、冠詞で悩んだことがあるからでしょう。そういう決断力(decision-making)は教えるという作業ではとても大切です。生徒は、はっきりと判断してくれる先生は相対的に好きな傾向があります。分かりやすいからです。その点では、KK先生とSG先生の指導の決断力は質が違います。

残念なことで気をつけてほしい点は、自分の勝手な判断で教えることは避けることです。授業は学習指導要領のもとに行われます。それぞれには目的があります。それを無視してよいはずがありません。尊重しなければ、中学校や高校の教師として失格でしょう(現実にはそういうことがまかり通っていますが)。つまり、この模擬授業でも、教科書に準拠して、教科書内容に沿って教えることです。自分の好きなことだけを教えよいはずがありません。

冠詞の指導は、やはり文脈の中で考えることが大切だと思います。日本語にはない概念なので、生徒にとっては理解しにくいやっかいなものです。ただ冠詞を正確に理解していなくてもコミュニケーションは可能です。受験のためだけに英語を教えるわけではないので、やはり英語は使えるために教えるのが主たる目的なのでその点を忘れてはいけないと思います。

This is the weapon of a Jedi Knight.

 という文が「〜の唯一の武器」と言えるでしょうか?これは、

What is it? と聞かれて、それに答えて、

Your father's lightsaber. This is the weapon of a Jedi Knight.  ...

と言っています。つまり、「父のライトセイバー。ジェダイの騎士が持つ武器のことだ」というくらいで、lightsaberがあることによって、theとなっていると考えます。おそらく、そのほうが理解しやすいだろうと思います。

私だったら、映画をもっと使って、映画の場面にそって冠詞を理解できるように工夫するでしょう。聞き取りの練習にもなるかもしれません。そのためには、DVDをもっとうまく活用できるように準備しておかないとよい授業はできません。

やはり、大胆さとともに、ていねいな準備が大切です。

14 KB先生

KB先生がやりたいことはよく分かりました。とてもよいことだと思います。うまく言えませんが、スターウオーズの映画で出てくる「force」というものが、教えることにもあるように思います。教師の意欲や考えが生徒に反映することがある。つまり、教師と生徒が共通の関心や知識でつながる瞬間が教えているときにあります。これは、教師側のテクニックの問題ではなく、意欲や教える内容の力のようなものだと思っています。これは科学とは言えないかもしれませんが、「教えたい」「これを取り上げたい」と思うことがかなり重要に作用することが往々にしてあるということです。それがKB先生の授業にはあったような気がします。ちょっとうまくいきませんでしたが。

映画の使い方をもう少していねいに準備して提示したほうがよかったでしょう。TSUTAYAで借りたと正直に言う必要はありませんが、ここはもっと工夫しなければいけません。映画の背景を英語で、自分の経験とあわせて、導入する必要があります。そこがうまくいくと、この授業はほぼ成功です。しかし、映画を使う場合は、授業の内容と関係させる必要があるでしょう。音楽と違い、ちょっとリスニングや発音指導に使うという訳にはいきません。この授業でこの映画を使う場合は、KB先生の感動した映画として取り上げ、映画で泣いたことがあるかどうかについて、男女差を調べて、教科書内容に入るということになりますか?

私が教えるとしたら、高校のリーディングの授業ですから、Pre-readingはさらっと終えて、教科書内容に入ります。それも英語で内容を確認しながら進めます。内容の確認をしながら、語句の確認、発音の確認などをして、だいたい内容が理解できたら、音読をして、質問を出してから黙読などをして考えさせて、内容をもとに英語でやりとりをする。その後、情報の整理をワークシート(英語)を使って行う、という流れで、教えます。リーディングだから訳すということを考える必要はありません。

リーディング指導の際に問題となるのは、やはり語彙力と読解力です。これを日本語に訳す作業をしていると、その変換作業に相当の労力を払います。それよりも、内容に焦点を当てることが大切です。その際に日本語は必要になるかもしれません。英語でむずかしい場合は日本語で内容を確認しますが、その後には必ず英語で内容を確認する活動を入れることです。内容が理解できたら、シャードーイングとかの活動を取り入れたり、何か別の活動を取りいれて、教科書内容にそって活動(プレゼンテーションなど)をすることが大切だと思います。

いずれにしても、KBさんが考えたことは決して悪いことではありません。どんなことでも失敗の積み重ねが成功につながります。この授業にはその足跡があったように思います。

15 ST先生の授業

ST先生の授業は全体的によく考えてありました。雰囲気も明るく中学生も安心して学べる授業環境を提供できると思います。中学校1年生というのは、小学校から外国語活動が始まっていますが、正課として英語を学ぶ最初の段階です。重要な時期なので、ていねいに、しっかりと、落ち着いて、安心して、学べる状況は、英語の授業が好きになる第一歩です。その意味でST先生はよかったと思います。

指導案についてコメントしておきます。これも何度も言ったり、書いたりしているのですが、改善されないので、さらに書いておきます。

英語授業の展開の基本の例は次のように表せます。

1 挨拶・準備(warm up)
2 復習(review)
3 新しく学ぶ内容の導入(presentation of new materials)
3.1 語句(発音・意味)(new words and phrases)
3.2 文法・文 (grammar points and target sentence)
4 テキスト内容の理解と確認(reading for comprehension)
5 テキスト音読(reading aloud for production)
6 テキスト内容などに関する活動(practices or activities for production)
7 まとめ (wrap up or consolidation)

別の言い方をすると、

準備(挨拶)
復習(確認)
導入(新しく学ぶ内容)
展開(活動) 
整理

というような手順(teaching procedures)になります。

常に、導入 → 展開 → 整理 とすると、ちょっと変です。

授業内容は、what  から which  とていねいに文法を教えていました。基本的によいと思います。カードもきれいに作成してあり、見やすいし、板書構成も問題ありません。ただ、教育実習までにはもっと板書するアルファベットなどを練習しておいたほうがよいでしょう。これはみなさんに言えることです(私もそうですね)。

ちょっと気になったことは、

Which .... do you want ....?

だけの文の練習になったことです。教科書では、

Which bottle is the  shampoo? -- This one is.
Which has ....    or    ?     -- The shampoo bottle does.

などがありました。練習に少し工夫があったほうがよかったかもしれません。

でも、ST先生は、中学生にていねいに教える姿勢がありました。私は、今回の模擬授業で、ていねいに、きちんと考えることを重要性をあらためて認識しました。ありがとう。

みなさんが、読んでくれていることを期待します。

いつものとおりですが、乱筆乱文ご容赦。



課題について補足しておきます。提出は、1月18日です。

模擬授業を通して、自身でテーマを持ち、それについて、調べて、考えたことを論じる。その際に、下記の3点について必ず触れること。

1)      指導案と実際に授業をした後の結果の比較
2)      指導にあたって、どのように準備して、どのように反省したか
3)      自分の授業と他の人の授業を比較して考えたこと

言語は、英語、日本語どちらも可。資料なども含めて、A4用紙10枚程度。
テーマ例)生徒の英語学習意欲をどのようにして高めるか?
評価のポイント:内容、思考、構成、意欲など。

※表紙をつけて、きちんと提出してください。次の授業の際に具体的に説明します。