2013年1月18日金曜日

今回の模擬授業を通して考えたこと

あらためて今回の21の授業を通して、私が考えたことをまとめておきます。

反省点として、

・授業の基本についての議論が不十分だった
 
英語授業をするには、基本的で実践的な知識や技能が必要です。基本は、学習指導要領です。中学校学習指導要領の外国語の目標は、


第1 目標

外国語を通じて,言語や文化に対する理解を深め,積極的にコミュニケーションを図ろうとする態度の育成を図り,聞くこと,話すこと,読むこと,書くことなどのコミュニケーション能力の基礎を養う。
となっています。学校教育法における学校は、これを基準として英語を教える必要があります。学習指導要領は大まかな教育内容を定めています。各学校では、この学習指導要領を踏まえて、教育課程(カリキュラム)を編成しています。
その上での模擬授業です。
学習指導要領は、実際には、現場ではあまり参照されません。多くの先生は気にしません。この授業を受けたみなさんの多くは、自分の学校経験を土台に、模擬授業を考えて、実践しました。そのために、やはり、高校や大学受験を意識した、自分の学習者として経験に基づいて、授業をした人が多くなったようです。それに、「英語で授業をする」という枠組みを与えられたので、その点で少し戸惑いがあったようです。
この点について、もう少し時間をとってから模擬授業に入ればよかったと反省しています。
昭和22年に発表された学習指導要領の英語(試案)をちょっと見てみましょう。その目標について次のように言及されています。長いですが引用します。
一.英語で考える習慣を作ること。
 英語を学ぶということは,できるだけ多くの英語の単語を暗記することではなくて,われわれの心を,生まれてこのかた英語を話す人々の心と同じように働かせることである。この習慣(habit)を作ることが英語を学ぶ上の最初にして最後の段階である。
 英語で考えることと翻訳することとを比較してみよう。前者は英語をいかに用いるかということを目的としているが,後者は古語を学ぶときのように,言語材料を覚えることに重点をおいている。前者は聴き方にも,話し方にも,読み方にも,書き方にも注意しながら英語を生きたことばとして学ぶのに反して,後者は書かれた英語の意味をとることにのみとらわれている。ここにおいて,英語で考えることが,英語を学ぶ最も自然な最も効果的な方法であることは明らかである。
二.英語の聴き方と話し方とを学ぶこと。
 英語で考える習慣を作るためには,だれでも,まず他人の話すことの聴き方と,自分の言おうをすることの話し方とを学ばなければならない。聴き方と話し方とは英語の第一次の技能(primary skill)である。
三.英語の読み方と書き方とを学ぶこと。
 われわれは,聴いたり話したりすることを,読んだり書いたりすることができるようにならなければならない。読み方と書き方とは英語の第二次の技能(secondary skill)である。そして,この技能の上に作文と解釈との技能が築かれるのである。
四.英語を話す国民について知ること,特に,その風俗習慣および日常生活について知ること。
 聴いたり話したり読んだり書いたりする英語を通じて,われわれは英語を話す国民のことを自然に知ること(information)になるとともに,国際親善を増すことにもなる。

多少時代背景がありますが、基本的に今でも通じる理念が書かれています。学習指導要領は現在でもそのスタンスを維持しています。教育職員免許状を取得するには、当然その点を理解する必要があります。
・教科書に対する理解が不足していた
「教科書を教える」のではなく「教科書で教える」とよく言われますが、これはあくまで教科書を読んで訳すことに対する批判です。教科書を無視してよいということではありません。その点、もっと教科書分析をする必要がありました。教科書はつまらないと考える傾向にありますが、そんなこともありません。また、生徒は、教科書内容をまず理解する必要があります。自分の価値判断だけで決めてしまうと危険です。教科書はたくさん出ています。教科書協会のウェブで紹介されていますので、概要は把握できます。
模擬授業に入る前にそのような時間が取れればよかったと反省しています。
細かい点はいくつかありますが、大きく二つです。これから実際に教師を目指す人は考えてみてください。
次に、私自身が模擬授業を通して思ったことを率直に書いておきます。
・授業とは何か?
ということです。学校の先生は、英語の授業だけをしていればいいという訳ではありません。実際教員採用試験では、教科を教えることだけではなく、全人格的な教育活動を要求されます。日本の学校教育は特にその傾向が強いと思います。また、高校や大学受験や部活動の指導などが教育活動で大きなウェイトを占めます。その点から考えれば、今回の模擬授業のどれもが現実的ではありません。教育実習に行くと現実があります。みなさんは、その現実に対応しなければいけません。
その点からすると、授業に必要な要素は、
英語の知識と技能
授業をコントロールする力
の二つです。それに、定義が不明な「人間力」が加わります。
しかし、私が、この模擬授業を通して「授業とは?」ずっと考えたことは、「教えること」を楽しんでいるかどうかでした。何を教えようと考え、どう教えようかと考え、どのような工夫をしたか、教えてみてどう考えたか。あるいは、観察者としてどのように授業ということを考えたか。あるいは、生徒としてどのように授業に参加していたか。そのようなことをずっと見ていました。
教師という仕事は、上の二つのことがある程度あればだれでもできます。しかし、「よい先生」はだれでもなれる訳ではありません。また、生徒との関係もありますから、だれにでも愛され、尊敬される先生はいないと思います。英語指導の場合、英語の知識があっても生徒にとってよい先生かどうかは別かもしれません。また、英語で授業をしているからといってよい授業かどうかは分かりません。「よい先生」の定義も様々です。
いままで多くの授業を見てきました。それぞれの先生はそれぞれの個性を生かして授業をしています。上手に教える先生の要素はある程度分かります。逆に、上手に教えることができない先生の要素もある程度把握できます。分岐点は、一言で言うと、
教えることや学ぶことを楽しんでいるかどうか
と考えるようになりました。教え方は様々な方法があってしかるべきで、こうしなければいけないということはありません。英語教師としてのプロフェッショナルは、生徒の英語力の向上をサポートすることだと思います。模擬授業を楽しく思った人はぜひ教師という職業を選んでください。
ちなみに、私はこの授業をするのが一番の楽しみでした。ありがとう。