2015年12月19日土曜日

模擬授業7

たいへん興味深い模擬授業の機会をありがとうございました。みなさんにとっても授業を考える上で、役立ったことを期待します。

現在は、職人としての授業研究やある指導法の追求という授業研究ではない時代だと考えて、このような「いい加減」で「丸投げ」の授業を展開しました。ある面で不満を持つ人もいるでしょうね。その場合はたいへん申し訳ありませんでした。

私は、「省察を通して授業を考える」ということをこの授業で展開しました。授業に正解はなく、指導法にも、好みや良し悪しはありますが、正解はないと考えるからです。おかげさまで、今回もいろいろな発見ができました。私にとっては「おもしろい」模擬授業でした。それは感想に書いたとおりです。

「教える」ということはおもしろいプロセスであり、自分を育てるプロセスでもあります。みなさんの「教える」姿勢から、学習者は刺激を得て、「学ぶ」というプロセスを育みます。私はそれが大切だと思うし、それしかないのではないか、と考えるようになってきています。教師は、目立つ存在である必要はない、人を強制する存在ではない、ましてや、人の上に立つものでないと思います。つねに、学習者とともにあるという気持ちでよいのではないでしょうか?


17 YK先生の模擬授業

YK先生は自分の思想とかものの考え方にある強いこだわりがあるのでしょう。授業でもその姿勢が出ていました。教師にはある面でそういう姿勢が必要ですが、それが授業の前面に出すぎると、生徒には多少よくわかりにくいことが生じます。それが模擬授業で出たように思います。おそらくYK先生の授業スタイルは変わらないし、変える必要もないかもしれません。問題は、英語授業の目標とYK先生が教えようとしていることが合っているかどうかです。英語授業の目標は、「コミュニケーション能力の育成」です。授業で英語を使うプロセスを単純に考えた場合、教師が英語を使い、生徒が英語を使えるプロセスをていねいに授業で提示し、その場を与える必要があります。伝統的なPPPもtask-basedもCLILなども現在よく言われている指導法はみんなそのプロセスをどう実現するかを考えています。文法訳読もある面ではそれを目標にしていますが、実態はそうなっていません。YK先生の意図をどうコミュニケーション能力の育成という目標につながえるが今後のカギです。

授業がうまくいかなかったもう一つの原因は、指導案で表している流れをスキップして展開したことにあります。指導案どおりに展開しているともう少しYK先生の意図は理解されたでしょう。それから、時間配分などの具体的な展開が十分に準備されていない点です。頭の中で考えて、それを実際に練習してから、改善して授業を実施していないことがよくわかります。これでは同じ誤りを繰り返します。授業は理屈ではなく、実践です。うまくいくかいかないかは指導案の段階でほぼ決まります。教育実習ではていねいにその点をやってほしいと思います。

YK先生がしたい授業の展開は、私は大好きです。なんとか英語でそれを実施していただきたいと思います。それはそれほどむずかしいことではありません。教科書内容からそれほど離れないで、展開できます。It's important for us to think about peace.に焦点をしぼって、広島、長崎のことをもう少し深めるためには、YK先生自身のことばで英語で導入することです。ぜひ、教育実習で考えてみてください。

18 IS先生の模擬授業

IS先生は、すでに教育実習を終えているので、落ち着いて展開していました。いい先生になるとは思いますが、先生という職業には就かないようです。その点から、ここではIS先生の授業展開自体にあまり言及せずに、授業を見ながら私が考えたことを書いておきます。それは、英語の技能を中心とした活動と、文法や語彙の提示についてです。授業対象は高校2年生ですから、文法や語彙についてはあまり制限なく使ってよいでしょう。また、4技能も併せて統合的に学習する段階です。取り上げたのは、If it were not for 〜という文型です。いわゆる仮定法(subjunctive mood)ですが、最近ではあまりとりたててこの仮定法という用語をあまり使わなくなっている傾向があります。日本の学校文法では常識的につねに取り上げ、大学入試などでも触れられることが多いのです。しかし、それほどとりたてて、このような文型を扱う必要がどれだけあるだろうか?ということです。

言い方としては、Without the eyes (ears), If you didn't have the eyesなどと言う方が自然かと思います。実際にどの程度使うのかということを考えると、聞く、読む、話す、書くという活動のどの段階でどう取り上げるかを考えることも大切です。口語的な言い方、話し言葉と書き言葉、アカデミックな英語などなど、高校段階になると考える必要があるでしょう。教師としてのおもしろみは、そのようなことを考えることにあります。教師にならなければ、あまりそのようなことは考えません。留学したとしても同じです。目の前の課題の処理を通して経験的に学びます。親しい人と話すとき、プレゼンテーションをするとき、ビジネスの際に使うとき、などなど、英語は経験的に学びます。

日本の高校でも、学習者のニーズが高ければ、それを考える必要があると思います。What is uniquely human?という教科書の題材(元が授業の際に配布されていないのでわかりませんが)のテクストを見るかぎりでは、教科書内容は読んで理解し、それに対して英語で自分の意見をまとめ、発表する、などの活動で、私は十分だと思いました。指導案だけを見ると、文法訳読的な展開になっています。コミュニケーション能力という目標を考えれば、仮定法の文型に特化した活動をあえてする必要はないと思いました。

19 HH先生の模擬授業

HH先生は、生徒に、何かおもしろいことをしてやろう、という姿勢のある教師にとっては最も大切な素養を持った人だと思いました。いろいろと工夫してあり、よかったと思います。指導案は、教育実習の際にはていねいに書いておいてほしいと思います。グループワークなど実際に中学生を対象として授業をした場合、ていねいな準備が必要です。

授業のアイディアは、なるほどと思いました。着眼点がよかったです。展開にも工夫されていました。文法は、現在分詞です。指導案には、現在分詞をどのように使うのかを生徒にどう提示するのかが示されていませんでした。また、適切に文のかたちを板書したりしてていねいな提示がなされていませんでした。そのあたりの展開が指導案でも実際の授業でも多少わかりにくいものとなりましたが、アイディアはよかったと思います。教育実習では、提示のしかた、練習のしかた、ポイントの示しかた、活動にあたっての言語材料の準備などていねいにする必要があるでしょう。

活動は、教科書内容に沿っていたのでわかりやすい内容ですが、場面をつくることを考える必要があったように思います。絵を提示して、Who is Nobita? と聞きました。指摘もあったように、Which (one) is Nobita?などが適切だったと思います。あるいは、現在分詞の提示だとしたら、教師のほうから、Who is the boy wearing a yellow shirt? He is Nobita.などとしてもよかったでしょう。また、 describing your friends も場面を示して、Who is the man eating Yakitoridon?  -- He is 〜.  ◯◯ is the man eating Yakidorido.は場面がはっきりしないとよくわからない言い方だと思います。たとえば、

Mr Sasajima is the professor teaching English teaching methodology.(?)
Mr Sasajima is a professor teaching English teaching methodology (◯)
The professor teaching English teaching methodology is Mr Sasajima.
A professor teaching English teaching methodology is Mr Sasajima.(?)

例文をつくる場合は、ある程度複数の人に確認して作成する場合がよいと思います。また、場面を考えて提示しないと、意図しない誤解が生まれるかもしれません。その点で、教科書の英語はおもしろないなどと、多少誤解がありますが、よく考えられているので、できるかぎり学習者のことを考えても教科書などの英語は利用するようにしましょう。

3人の先生、いずれにしてもありがとうございました。また、みなさん、ありがとうございました。今回も興味深く模擬授業を見ました。どうしてかはわかりませんが、ちょっと忙しかったですね。ゆっくり授業について話し合う時間がありませんでした。

年を越して、全体でゆっくり議論しましょう。疑問に思うことなど、ぜひお願いします。

また、最後のレポートは期待して読ませてもらいます。

乱筆乱文にて失礼。