2014年12月14日日曜日

模擬授業6

模擬授業も6回目を迎えました。授業の良し悪しは別として、みなさんが、英語の授業をするということはどういうことか、具体的にイメージできてきたかどうかがこの授業のポイントです。

人と同じことをする必要はありません。「この指導法が絶対だ」ということもありません。「〜がこう言っているからその指導をしなければいけない」ということでもありません。英語だけで教えなければいけない、ということでもなく、文法訳読が絶対いけないということでもありません。受験のためというニーズは無視することはできません。

英語教育での「英語を教える」という学問とも言えない領域ですが、けっこう奥が深く、やりだすと面白い仕事です。その道に少しでも興味を持って進んでくれるとうれしいと思い、この授業をしています。今回の3人の先生は、多少失敗はあったかもしれませんが、熱心に工夫をしました。それは無駄にはならないし、無駄にはしてはいけないと思います。

以下、感想です。

13 WH先生の授業

WH先生は自分が受けた授業体験をもとに、そこから何か新しい楽しいことをやろうとして、「すごろく(board game)」(写真参照)を活動の中心にしようと決めたようです。教材はたいへんよくできていて、おもしろいものでした。

指導案もよく考えてあり、展開もある程度明確だったと思います。ただ問題は、実際にどう展開するかということの実践の準備が不足していました。教育実習ではこれは絶対にやってはいけません。実際に教師がどう発話して、生徒がそれに対してどう対応するのかを、きちんとシミュレーションしておく必要があります。

教科書の該当ページを用意するのを忘れてしまったという大きな原因は、教科書内容と発展教材としてすごろく活動が関連性が薄いという展開のせいです。教科書と密接に結びついていれば、そのようなことは起こらないと思います。その点で、模擬授業は「授業の流れ」をつかむことが、一つ重要な目的です。「ここで挨拶して、次にこの活動をして、これから今日の模擬授業の展開をします」という設定は、少しやりにくいでしょう。一通り通してやるほうがよかったかもしれません。

日本語と英語の問題ですが、やはり英語を授業の基本言語とすることです。日本語は補足とするように考えるとよいと思います。WH先生は典型的な文法訳読の英語授業を受けてきたそうです。そのイメージから抜け出られなかったと授業後言っていました。この模擬授業でイメージを少しでも理解できれば、価値ある内容となるでしょう。ぜひふりかえりをしっかりして、考えてみてください。

WHさんのこの模擬授業に対する考え方や準備は価値があると思います。この姿勢は教師としては最も重要な要素です。「英語で授業をする」ということはパフォーマンスをすることではないので、ふつうにやればよいのです。話しことばは書き言葉とは違います。気楽に英語を使うことを生徒に示せば、生徒も気楽に間違いを恐れず英語を使います。そうすれば「すごろく」は大成功するでしょう。模擬授業で生徒役の人がやっていた活動が、中学生ができれば、教師は何もする必要はありません。教師はにこにこと見ていればよいのです。

14 OK先生の授業

OK先生もよく準備してありました。教師として重要な資質は、まず正確で適切な英語を教えることです。次に、それをどう生徒に提示し、英語を使う場面を演出するか、です。さらには、英語指導に対する全般的な生徒の学習のサポートです。OK先生はそのような資質はしっかり備わっていて、とてもていねいでアイディアがありました。

問題は、WH先生とほぼ同じことですが、教科書とのつながりをどうするかです。実際に50分授業をするとなると、教科書題材の理解という点からすると課題が残ります。授業は、比較級と最上級の理解と定着の活動に重きを置いた活動になりましたが、タスクが多少不明確だったようです。大学生だとすぐに対応できますが、中学生だともっと明確にする必要があります。また、中学生がやりとりをする状況設定をもう少し自然にする必要があるでしょう。これも実際にやってみると分かります。教育実習ではその点を考えてください。

指導案は、多少混乱があったように思います。指導計画だと、実際に模擬授業で行った活動は、単元のまとめに行うような活動です。3時間目は、教科書内容にそった活動で、目的にもあるとおり、マチュピチュなど世界遺産に焦点を当てるべきでしょう。

全体的には、工夫があり、教師として教壇に立っても、WH先生同様いい先生になると思います。理由は、基本的に「ていねい」だということです。手を抜かずに教材研究をしてありました。教材研究をしっかりしていれば、それほど大きな間違いは起こりません。課題は、実際にどう授業を展開するかでしょう。これはやればやるほど上手になりますが、その際には、第3者の意見をよく聞く、という機会を持つことです。それも具体的にだれかに確認してもらうことです。また、アドバイスをもらうことです。たとえば、比較級と最上級に焦点を当てましたが、活動では、moreと(the) mostだけではなく、high, higher, highestも含んだ内容でよかったと思います。活動はあまり制限してしまうと不自然になり、練習のための練習となります。

タスクデザインを明確にして、活動は可能なかぎり自然に

ということです。WH先生の「すごろく」とOK先生の比較級最上級活動を比較しながら、教育実習での活動を考えてみてください。

15 IR先生の授業

IR先生は、WH先生やOK先生とは少し異なる授業展開を考えました。結果的には失敗でしたが、私はその方向性は正しいと思います。人はそれぞれ好みや個性があり、人と同じことをする必要はありません。ポイントは、なぜ思ったような結果にならなかったかをよく考えることです。次に、ではどうしたら自分が計画した展開がうまくできるのかを工夫することです。

指導案を見る限りでは、英語で展開することを意図したと思いますが、日本語が多くなりました。理由は本人が一番わかると思います。一度授業をだれかを相手に練習していればこの問題は解決されるはずです。

問題は、授業のねらいが少し分かりづらいことです。意図したことはおもしろいのですが、それが授業を通して生徒に伝わっていないことです。授業は流れが大切です。あることを前提にして授業をするというのは危険です。生徒が宿題をしていない場合も想定して計画しなければいけません。本時では、目標を明確にして、イソップの話、本文の話の要点を英語で展開して、生徒の理解を生徒とのやりとりを通してきちんと整理してから、ディスカッションへと進むべきだったと思います。ディスカッションも日本語で行うならば日本語で行い、さいごのまとめの意見を英語で発表するなどとすれば、おそらく無理のない言語活動ができたと思います。

物語の内容に焦点を当てるというのはとても大切なことで、また、それについて考える活動もとても大切です。IR先生の意図はまったく間違っていませんが、それが結果的にうまくいかなかったというだけです。教育実習で同様のことが起こると大きな問題となります。

自分がやりたいことは、多くの場合、生徒がやりたいこととは一致しないことが多いです。まずは、生徒が何を学ぶのかをよく考えてください。また、生徒が英語に興味を持つ、あるいは、生徒が英語が使えるようになる、ということをまず考えてください。それから、

では、自分ができることは何か

を考えてください。人の真似をする必要はありませんが、ひとりよがりになってはいけません。生徒あっての授業です。

多くを考え、教材も絵を描いて準備しました。ご褒美も用意しました。この姿勢はぜったに無駄にはなりません。授業はまずシンプルに考えることが大切です。そのあとにちょっとした工夫です。

1 教科書教材の学習のポイント → 目標設定(多くて3つ)
2 教科書題材の正確な理解とその指導方法の選択 → 展開
3 理解できているかどうかの確認 → 評価方法
4 理解したことの定着のための言語活動 → タスク
5 目標の確認 → ノート整理、宿題

IR先生の方向性は間違っていませんから、さらに考えてみてください。

本日は、3人ともよく準備して模擬授業に取り組んでいました。うまくいった部分もあるし、うまくいかなかった部分もあるでしょう。再度様々な指導法を再度復習し、授業に対する理解を深めてください。

私としては、たいへんおもしろく授業を見ました。考えさせられることも多かったです。あらためて、「教える」ということは一人ひとりの人がどう省察(reflection)するかにかかっていると思いました。私が教えられることは限界があるなとつくづく反省してます。

いつものことですが、見直してませんので、誤字脱字、誤解などご容赦ください。次回も楽しみにしてます。