2012年12月24日月曜日

模擬授業第5回目

16 FJ先生の授業

FJ先生は、笑顔がよくて、先生らしいきちんとした雰囲気を持った態度で授業をしました。サンタクロースやクリスマスを取り上げて教えようとした点に、FJ先生の先生としての適切な資質があります。厳しいことを言ってしまいましたが、私がここに書くことを理解してもらえれば、いい先生になると確信します。

おそらくちょっと迷いながら準備不足で授業をしたのでしょう。あまり生徒を見ていなかったように思います。たぶん日々忙しく、体調も悪かったので、しっかりと考える時間がなかったのかもしれません。教育実習などでは、もう少しきちんと準備して、生徒が授業では何を学びたいのかを考えて、ていねいに指導すると、まったく違ったよい授業ができると思います。生徒は、ただ単に英語の単語の現在形と過去形をおぼえたいのではありません。「英語を分かりたい」「英語を使える」ようになりたいのです。

その点から考えると、「本時のねらい」は、もっと明確にしなければいけませんでした。取り上げたところはまとめの部分で、本来は授業として取り上げるにはむずかしいところです。その部分を選んでしまったことは、私の指示がよくなかったのかもしれません。これは私の責任でしょう。それは別として、選んだ部分を題材として考えると、「本時のねらい」は、

一般動詞を使って、過去の出来事について述べることができるようになる

として、言語活動をすることが大切です。授業案は、導入も特に必要なく、復習活動と応用活動だけに焦点を当て、生徒が過去形を使ってコミュニケーションができるかどうかです。教科書の右側のページには聞き取りの活動がありましたので、4技能すべてにわたり活動を考えるべきです。何度もこのブログで書いていますが、

説明すれば、生徒が分かったとはなりません。生徒に英語を実際に使う場面を提供しなければいけません。それも、コミュニケーションとしての英語を教えることが大切です。

しかし、中学校1年生に英語を教えるためには、ていねいな指導が必須です。語句の意味、発音、さらに、授業で使う語句の現在形と過去形のかたちの復習など、まず基本的な練習を一通り復習する必要があるでしょう。

What is your special Christmas memory?

は、アイディアはよいのですが、ちょっと乱暴です。タスクを明確にしておかないと授業は成立しません。

FJ先生の授業は多々問題がありました。しかし、だからと言って、駄目とはなりません。課題はこれからです。自分で何が問題かに気づくかどうかです。FJ先生は終わってみてそのことがよく分かったと思います。

17 SV先生の授業

高校1年生の授業でした。教科書はCrownで、内容もかなりしっかりとして、教えがいのある教材です。SV先生は、その点をよく理解していて、生徒が興味を示す写真などをうまく使って、時制について復習し、仮定法を教えるという展開でした。授業の流れとしては問題ないですが、つながりがあまりよくありませんでした。時制から仮定法という展開は、ひょっとするとむずかしいかもしれません。というのは、仮定法は時制のルールに則っていないので、その点を整理して教えないと混乱します。仮定の話だから、事実を表す時制のルールとは違って表現されるということですが、時制と関連させて仮定法を導入するのは学習者によっては分かりにくい可能性があります。

では、どう教えるかということですが、個人的には、どのような場合も、場面や意味から英語を教えることが大切だと思います。「英語を使って英語の授業をする」ということが日本では議論の対象となりますが、ふと考えてみると、おかしな議論です。SV先生は、その点では、自然な雰囲気で英語で授業ができていました。その際には、この教科書の内容に焦点をしぼって、20世紀のことを英語で考えるように展開すると、教科書内容には自然に入れます。高校の授業は、中学校の授業と違い、あまり文法や語句の説明にこだわる必要はありません。中学生と違い辞書も使います。語句に関しては、発音はつねに練習する必要がありますが、生徒がある程度意欲を持っていれば、あまり細かく指導しなくてもよいでしょう。文法に関しても、英語を使うことで、考えさせるようにすることです。文法用語を使って説明して、意味のない練習問題ばかりをさせることは、英語嫌いを作る可能性があります。英語を使う場面を提示して、意味に焦点を当て、そこで文法などを考えさせて、生徒自身がルールを理解することが大切だと、私は思います。

SV先生は、ていねいな指導をしていました。とてもよいと思います。授業を見て一つ望むことは、「この授業では何を一番教えたいのか」をしっかりと持って授業に臨むことでしょう。目標に「戦争について関心を持つ」と書いてありました。この目標を達成するためには、もっと教材研究をしておく必要があります。生徒によってはもっと深く考えたい人がいるはずです。戦争はいつもどこでも起こっています。日本人が、広島や長崎のことを知っておく必要があるのはなぜでしょうか?それを英語で学ぶ意味はどうしてでしょうか?生徒がその点を理解すれば、英語で授業をしても何も問題ないのではないでしょうか?SV先生の授業を見てそんなことを考えました。

18 OT先生の授業

OT先生の授業観はよいと思います。その考え方が授業によく出ていて、それがある面で成功していました。分かりやすい英語で、気張ることがなく、自然に英語で生徒に語る姿勢がよかったと思います。生徒に話すときも、一人ひとりに話そうとしています。つまり、生徒を見て話しています。また、生徒の言うことを聞いていました。これはとても大切なことです。OT先生は、あまり大きな声を出していませんでした。場合によっては、実際に40人の生徒を相手にしたら、むずかしいこともあると思いますが、気にしないで、自分の姿勢を毅然とつらぬくと、うまく行くのではないかと思います。先生としてはよい資質を持っていると思いました。

中学校2年生の授業でした。Manga, Anime and Moviesが題材で、文法は同等比較です。ONE PIECEという漫画やアニメは多くの生徒が関心を持っているでしょうから、授業の入り口としてはよかったと思います。欲を言えば、やりとりの中で、as  〜 asの導入が、


presentation        practice         production



の基本に則っていると、うまくできたのではないかと思います。

このいわゆるPPPは、もう少しくだけて言えば、

見せて  まねさせ  やらせてみる

ということです。この基本は、機械的と批判する人もいますが、授業がうまくいくためには欠かせません。OT先生はそのことはよく理解しているので、あとは実践でしょう。

よい先生になるためには、実践の中で自分に適した教え方を工夫することです。だれかのまねをする必要はありません。その人の個性を生かして授業をすることです。OT先生はとてもいい雰囲気を持っていました。生徒にも好かれるのではないでしょうか。自分のペースを乱さず、ていねいに、子供のことを考えて、子供の学びを支えてあげることが大切です。

今年は、これが最後です。あと1回模擬授業を行います。あとはレボートです。

私が、みなさんのためにできることはあまりありません。あとは自分で考えるしかありません。おそらく人によってはここで書いたことも読まないでしょう。しかし、読んだ人は、何かしら思うことがあるでしょう。それが大切です。そこから先は、本当に教師を目指す人は考えてください。

さいごに、ここまで授業を見て、みなさんが努力することを3つあげておきます。

1 基本的な指導技術を理解してください(本を読めば分かります)

2 中学校や高校の英語授業の実態を理解してください
  (自分の経験をベースとすることは危険です)

3 英語を教えることの自分自身の目標は何かを考えてください

上記の3点についてきちんとした知識と理解を身につけてください。

では、よいお年を。





2012年12月18日火曜日

模擬授業第4回目

12 KK先生の授業

KK先生は、よく準備してありました。インドという内容と受動態という言語材料を教えることを目的としています。理想的には、この内容と言語がうまく統合されて授業が展開されるとよいと思いました。むずかしいことですが、いつもそのことを頭に置いて授業することは大切だと思います。英語の授業は、言語の授業ですから、英語という言語材料(語句や文法など)に焦点を当てるのは当然です。KK先生の授業は中学校2年生ですから、文法構造や語句をきちんと教えることが第1です。しかし、中学校2年生の多くは、それだけでは興味を持ってくれません。何か工夫をしなければいけません。その工夫の一つは社会や文化などの内容です。

インドという国は大きな国ですが、日本からすると誤解を持たれる国です。しかし、中学生の多くが関心を持つ国です。学習指導要領でもこのような文化については触れることが指示されています。授業のアプローチとしては、教科書の内容に沿っていてよかったと思います。しかし、英語でもう少しうまく展開できたのではないかと思います。なぜ先生は英語で話すことがよいかと言えば、理由は簡単です。英語によるコミュニケーション能力を育成するからです。先生が日本語ばかり話していれば、生徒は英語を使いません。英語ではむずかしいから日本語を使うという考えは、まちがいでしょう。

教科書には、

All these languages are spoken in India.

とありました。これがキーセンテンスです。ここではやはり話されている言語を具体的に出す必要があります。それとともに、受動態を指導できるでしょう。

People in India speak all these languages.

とどう違うのかを、場面を提示して指導することが大切です。「受動態は be + 動詞の過去分詞」で「〜される」という意味になると教えるだけでは、いかにも無味乾燥です。

KK先生は、とてもていねいに教えていました。教師としては見習うべき点が多々あります。ワークシートもていねいに作成されていました。しかし、英語の授業であれば、英語表現をもっと盛り込むべきでしょう。今日の目標は、

Where is India located on the map?
What notes are used in India?
What languages are spoken in India?

という質問をもとに、英語でやりとりできることとなります。

いずれにしても、KK先生の準備と努力は決して無駄にはなりません。手を抜けば、手を抜いたものにしかなりません。どれだけ手をかけて、効率よく授業をするかは、頭だけでは決して分かりません。体を使って、あれこれとやって、少しずつ分かってくることです。KK先生はその一歩を着実に進んでいます。

13 SG先生の授業

SG先生は多少乱暴で粗雑な点があります。しかし、これは決してマイナスばかりではありません。よい面をたくさん含んでいます。よい面は、多くの生徒の意欲を喚起する可能性があります。この授業で言えば、映画を題材として使ったことでしょう。また、冠詞ということに焦点をしぼったことです。おそらくSG先生が好きな映画であり、冠詞で悩んだことがあるからでしょう。そういう決断力(decision-making)は教えるという作業ではとても大切です。生徒は、はっきりと判断してくれる先生は相対的に好きな傾向があります。分かりやすいからです。その点では、KK先生とSG先生の指導の決断力は質が違います。

残念なことで気をつけてほしい点は、自分の勝手な判断で教えることは避けることです。授業は学習指導要領のもとに行われます。それぞれには目的があります。それを無視してよいはずがありません。尊重しなければ、中学校や高校の教師として失格でしょう(現実にはそういうことがまかり通っていますが)。つまり、この模擬授業でも、教科書に準拠して、教科書内容に沿って教えることです。自分の好きなことだけを教えよいはずがありません。

冠詞の指導は、やはり文脈の中で考えることが大切だと思います。日本語にはない概念なので、生徒にとっては理解しにくいやっかいなものです。ただ冠詞を正確に理解していなくてもコミュニケーションは可能です。受験のためだけに英語を教えるわけではないので、やはり英語は使えるために教えるのが主たる目的なのでその点を忘れてはいけないと思います。

This is the weapon of a Jedi Knight.

 という文が「〜の唯一の武器」と言えるでしょうか?これは、

What is it? と聞かれて、それに答えて、

Your father's lightsaber. This is the weapon of a Jedi Knight.  ...

と言っています。つまり、「父のライトセイバー。ジェダイの騎士が持つ武器のことだ」というくらいで、lightsaberがあることによって、theとなっていると考えます。おそらく、そのほうが理解しやすいだろうと思います。

私だったら、映画をもっと使って、映画の場面にそって冠詞を理解できるように工夫するでしょう。聞き取りの練習にもなるかもしれません。そのためには、DVDをもっとうまく活用できるように準備しておかないとよい授業はできません。

やはり、大胆さとともに、ていねいな準備が大切です。

14 KB先生

KB先生がやりたいことはよく分かりました。とてもよいことだと思います。うまく言えませんが、スターウオーズの映画で出てくる「force」というものが、教えることにもあるように思います。教師の意欲や考えが生徒に反映することがある。つまり、教師と生徒が共通の関心や知識でつながる瞬間が教えているときにあります。これは、教師側のテクニックの問題ではなく、意欲や教える内容の力のようなものだと思っています。これは科学とは言えないかもしれませんが、「教えたい」「これを取り上げたい」と思うことがかなり重要に作用することが往々にしてあるということです。それがKB先生の授業にはあったような気がします。ちょっとうまくいきませんでしたが。

映画の使い方をもう少していねいに準備して提示したほうがよかったでしょう。TSUTAYAで借りたと正直に言う必要はありませんが、ここはもっと工夫しなければいけません。映画の背景を英語で、自分の経験とあわせて、導入する必要があります。そこがうまくいくと、この授業はほぼ成功です。しかし、映画を使う場合は、授業の内容と関係させる必要があるでしょう。音楽と違い、ちょっとリスニングや発音指導に使うという訳にはいきません。この授業でこの映画を使う場合は、KB先生の感動した映画として取り上げ、映画で泣いたことがあるかどうかについて、男女差を調べて、教科書内容に入るということになりますか?

私が教えるとしたら、高校のリーディングの授業ですから、Pre-readingはさらっと終えて、教科書内容に入ります。それも英語で内容を確認しながら進めます。内容の確認をしながら、語句の確認、発音の確認などをして、だいたい内容が理解できたら、音読をして、質問を出してから黙読などをして考えさせて、内容をもとに英語でやりとりをする。その後、情報の整理をワークシート(英語)を使って行う、という流れで、教えます。リーディングだから訳すということを考える必要はありません。

リーディング指導の際に問題となるのは、やはり語彙力と読解力です。これを日本語に訳す作業をしていると、その変換作業に相当の労力を払います。それよりも、内容に焦点を当てることが大切です。その際に日本語は必要になるかもしれません。英語でむずかしい場合は日本語で内容を確認しますが、その後には必ず英語で内容を確認する活動を入れることです。内容が理解できたら、シャードーイングとかの活動を取り入れたり、何か別の活動を取りいれて、教科書内容にそって活動(プレゼンテーションなど)をすることが大切だと思います。

いずれにしても、KBさんが考えたことは決して悪いことではありません。どんなことでも失敗の積み重ねが成功につながります。この授業にはその足跡があったように思います。

15 ST先生の授業

ST先生の授業は全体的によく考えてありました。雰囲気も明るく中学生も安心して学べる授業環境を提供できると思います。中学校1年生というのは、小学校から外国語活動が始まっていますが、正課として英語を学ぶ最初の段階です。重要な時期なので、ていねいに、しっかりと、落ち着いて、安心して、学べる状況は、英語の授業が好きになる第一歩です。その意味でST先生はよかったと思います。

指導案についてコメントしておきます。これも何度も言ったり、書いたりしているのですが、改善されないので、さらに書いておきます。

英語授業の展開の基本の例は次のように表せます。

1 挨拶・準備(warm up)
2 復習(review)
3 新しく学ぶ内容の導入(presentation of new materials)
3.1 語句(発音・意味)(new words and phrases)
3.2 文法・文 (grammar points and target sentence)
4 テキスト内容の理解と確認(reading for comprehension)
5 テキスト音読(reading aloud for production)
6 テキスト内容などに関する活動(practices or activities for production)
7 まとめ (wrap up or consolidation)

別の言い方をすると、

準備(挨拶)
復習(確認)
導入(新しく学ぶ内容)
展開(活動) 
整理

というような手順(teaching procedures)になります。

常に、導入 → 展開 → 整理 とすると、ちょっと変です。

授業内容は、what  から which  とていねいに文法を教えていました。基本的によいと思います。カードもきれいに作成してあり、見やすいし、板書構成も問題ありません。ただ、教育実習までにはもっと板書するアルファベットなどを練習しておいたほうがよいでしょう。これはみなさんに言えることです(私もそうですね)。

ちょっと気になったことは、

Which .... do you want ....?

だけの文の練習になったことです。教科書では、

Which bottle is the  shampoo? -- This one is.
Which has ....    or    ?     -- The shampoo bottle does.

などがありました。練習に少し工夫があったほうがよかったかもしれません。

でも、ST先生は、中学生にていねいに教える姿勢がありました。私は、今回の模擬授業で、ていねいに、きちんと考えることを重要性をあらためて認識しました。ありがとう。

みなさんが、読んでくれていることを期待します。

いつものとおりですが、乱筆乱文ご容赦。



課題について補足しておきます。提出は、1月18日です。

模擬授業を通して、自身でテーマを持ち、それについて、調べて、考えたことを論じる。その際に、下記の3点について必ず触れること。

1)      指導案と実際に授業をした後の結果の比較
2)      指導にあたって、どのように準備して、どのように反省したか
3)      自分の授業と他の人の授業を比較して考えたこと

言語は、英語、日本語どちらも可。資料なども含めて、A4用紙10枚程度。
テーマ例)生徒の英語学習意欲をどのようにして高めるか?
評価のポイント:内容、思考、構成、意欲など。

※表紙をつけて、きちんと提出してください。次の授業の際に具体的に説明します。














2012年12月11日火曜日

模擬授業第3回目

回数を重ねて、少しずつ授業展開もよくなってきました。いままで模擬授業をした人の努力が少しずつ実り始めてます。重ねて言いますが、模擬授業の目的は、「うまくやること」ではありません。ポイントは、

模擬授業のためにどのように準備して、授業を実践する中でどう考え、終ったあとにどう考えたか

ということです。模擬授業を実施している間に、その人がどう考えたか、何を学んだかで、この授業の価値が決まります。観察(observation)と省察(reflection)を期待します。

さて、私のコメントです。

8 IN先生の授業

高校3年生の授業でした。高校3年生というとどうしても大学受験とかを意識した内容にならざるを得ません。その意味で、リーディング技能に関する授業はさまざまに重要でしょう。しかし、「読んで訳す」という活動は、必ずしもリーディング力につながりません。「読む」ということをもう少し考えたほうがよいかもしれません。「読む」という活動は、ことばの授業では基本的な活動です。単純に次のように整理できます。

◯ 読んで、聞いて → 話す、書く

しかし、次のような活動は、学習としては必要ですが、不自然です。

× 文構造を理解し、日本語に訳し、音読する

IN先生の授業では、教科書に入る前の部分で15分を使ってしまいました。ですから、読むという活動はここでは特にコメントしないことにします。

模擬授業での展開は、略語に関する活動でした。UNHCRが登場するまでに15分かかるということはちょっと授業全体の構成からすると問題かもしれません。が、着眼点はよいと思います。授業全体の雰囲気も明るく、実際に教育実習で授業する場合も、よい授業ができると思います。

UNHCR (the United Nations High Commissioner for Refugees)はけっこう重たい略語です。私が授業するとしたら、やはり、内容となる国連と難民のことに焦点を当てるでしょう。それから、緒方貞子さん です。生徒もその点が一番気になるはずですし、学びたいポイントとなります。

授業をする場合には、目標(ねらい)をいつも考えるようにすることが大切です。「生徒がおもしろがるから、歌をとりあげよう!」と考えた場合、その歌が、その授業の目標とどうかかわっているのかを整理しておかないと、生徒は混乱します。

IN先生の授業では、声も元気がよいし、よい学習環境を作っているし、教え方などには問題は何もないのですが、何を生徒に学んでほしいのかという点があいまいでした。教材研究として、UNHCRの活動や緒方貞子さんを理解しないで授業に望んだとしたら、たいへん危険です。指導案にはそれが示されていませんでした。教材を見て、何をどう教えるか、考えることが大切です。

9 YS先生の授業

授業のあいさつのときに、一人ひとりの生徒と挨拶のやりとりをする姿勢はとてもよかったですね。なかなか時間を取れないですが、授業の最初はとても大切です。先生にとっては40人ほどの生徒をまとめて考えてしまいますが、生徒一人ひとりにとっては、先生は一人です。授業時間に全員の生徒となんらかのコミュニケーションを図れることは理想かもしれませんが、大切です。YS先生はそれをやろうとする姿勢がありました。

さて、YS先生の授業は、中学校3年生です。成長過程でいちばんむずかしい時期ですが、英語を教える上ではやりがいのある学年です。文法は現在完了を扱っています。復習活動で、その活動をしました。しかし、習ったこととこれから習うことの整理が明確にできていないように思いました。Have you ever heard 〜 ? は、復習活動だという設定でしたが、語句の導入があり、その確認活動がありました。この展開は、ちょっと整理されていないようです。

復習活動(文法、語句、テキストなど)
→ 分かった! 
→ 新しく学ぶ内容(文法、語句、テキストなど)

と展開するのが基本です。

語句のワークシートは工夫がありました。が、すこし時間をかけ過ぎたと思います。もっとさらっと行い、教科書内容に入ったほうがよかったでしょう。

 YS先生は、授業にまじめに取り組みました。それぞれの活動は工夫の跡が見えます。とてもよいと思います。しかし、英語の授業に対するイメージが、たぶん、文法や語句を学ぶことで、それがテストされ、評価される、というようなもののようです。英語授業で、生徒が英語を使ってコミュニケーション活動をするということが、明確ではないのだと思います。あるいは、分かっているけれども、どうやってよいのか分からない、ということのようです。

英語の授業の目標は、英語のコミュニケーション能力の基礎を養うことです。最初の合いさつの場面では、それがうまくできていました。その後も同じような姿勢で授業を展開するとよい授業になると思います。教科書内容を教える、現在完了を教える、のではなく、教科書内容や現在完了を使って、コミュニケーション活動ができるように、授業展開を工夫することが大切でしょう。

10 MU先生の授業

MU先生は、中学校2年生の授業でした。授業のはじめは、よく工夫されていました。いわゆる「Oral Interaction」に近い活動です。特に、場面設定がよくできていました。個人的には、このような英語を使う場面をうまく設定することが、教師としての良し悪しを決める要素となります。また、この場面設定が、その授業のアンカーとなるようにしておくと、その授業の柱ができて、とても安定した学習環境を提供できることにつながります。その点、MU先生はよく考えていました。

指導案も、自分自身にとって分かりやすく、無駄がなく、余分な飾りを排除してあって、的確です。研究授業などでは、多くの人に見てもらうことになるので、ある程度説明も必要になりますが、基本はOKでしょう。

教科書の題材はシンプルで、本来であれば、あまり余分なことはせずに、教科書にそった活動を的確にやれば授業は成立するし、あまり失敗もない内容です。ただ、MU先生はそれではおもしろくないと考えたと思います。そのようなチャレンジ精神が、教えることでは大切です。それに、そうでなくては、教える仕事に喜びを見いだせないでしょう。

ただ、ちょっと気になったのは、学習者がどこまで習っていて、どこが学習のポイントなのかを明確にする必要があります。ビンゴなどの活動とコミュニケーション活動を組み合わせるときに、その点についてはきちんと整理して考えておく必要があります。そうしないと混乱するかもしれません。教えることで大切なことは、まず、

ていねいさ

次に

分かる
おもしろい
興味関心

などと続くでしょう。

短い時間ですが、MU先生がやろうとしたことは評価できます。

11 MR先生の授業

やはり、ていねいな指導が大切だと思いました。MR先生の人柄でしょうか?「Thank you」がとても多く、授業の印象がとてもよかったと思います。全体的にも、構成や手順などていねいでした。授業の進め方はよかったと思います。ただ、板書は工夫したほうがよいでしょう。これはMR先生に限ったことではありません。板書は、その場で考えて書くということは、教育実習などではやめたほうがよいです。何をどう書くかは、あらかじめ確認しておく必要があります。スペルなどの間違いはできるかぎりしないように努力することはもちろんですが、板書や教材を準備することが、結局、教材研究であり、授業準備です。これをきちんとていねいにやっておくことが最も大切でしょう。

ただ、ちょっと気になったことは、文法項目をただ説明したことでした。これは工夫がありません。その前後の活動からするとそこだけ浮いてしまったように思います。

説明する ≠ 教える

は以前に説明しました。「分かる」ようにすることが授業です。そのためには、どうすればよいでしょうか?ということです。

まず、興味を持ってもらう、刺激を与える、考える機会を与える、分かるように具体的な例を出す、経験させる、気づかせるようにする、などなど、授業で工夫することです。

たとえば、理科や社会では、日本語を使ってアプローチできます。英語授業でも日本語でアプローチすることももちろん大切ですが、できれば、「英語で」コミュニケーション活動などをしながら、英語を使いながら、英語が分かるようにすることが大切です。理由は、英語授業では、英語を使う場面を設定する必要があるからです。日本語で説明したほうが早いと考える人が多いかもしれませんが、それをしていて英語がうまく使えるようになるでしょうか?やはり、英語を使う環境を作り、英語を学ぶことが、中学校や高校でも必要です。

ワークシートはとてもよく作成されていました。ここのモデルダイアログをうまく利用するだけで、上記のことは解決できます。状況がある程度きちんとしていれば、生徒は分かります。分かったら練習をして(これはていねいにやっていました)、さらに、応用して実際にコミュニケーションしているという場面を作ることです。

真摯な姿勢は大切だなと、MR先生の授業であらためて思いました。

まとめ(ちょっと気になること)

ちょっと気になることがあります。全体的に教科書を教えるということを忘れているように思います。教科書の内容を学習することは生徒にはやはり大切です。教科書はつまらなく見えるかもしれませんが、よく作られています。教科書の内容を自分の都合のよいように変えて教えてしまうのは危険です。教科書内容を発展させることは大切ですが、関係のない内容ばかりを教えることは、実際に教壇に立って1年教えることを考えると、よほどうまくシラバスを作成しないとむずかしいことです。

いつも乱筆乱文で、すみません。

私が正しいことを言っているとは限りません。「教える」ことを考えましょう。いっしょに教えることを考えましょう。私はみなさんから多くのことを毎回学んでいます。ありがとう!