2014年12月21日日曜日

模擬授業7

今回で一応終了となりました。みなさん、ありがとうございます。私にとってはどの授業もおもしろく、自分自身の研究にも実践にも参考になりました。実際の授業は「ナマ物」で、失敗というわけにはいきません。自分で勝手に授業を組み立てるわけにもいきません。目の前の生徒が、最も必要とし、最も興味を持ち、意欲をかきたて、学びを活性化し、「よかった!楽しかった!英語が分かった!」というような成就感を味わったときが、私が思う「おもしろい授業」です。

みなさんにとっては、模擬授業が終わって、また、他の人の授業を見て、何を思い、次はどうするか、さらに、そのために何を自分で学習しなければいけないかが、最も重要です。教育実習では、ほとんどの模擬授業はあまり参考になりません。そこでまたそれぞれが考えることになります。いい加減にやればそれなりに実習は終わるでしょう。一生懸命やればそれなりの報いはあります。教職に実際に就くことを考えている人は少ないようですが、私はみなさんのだれもがいい先生になると思います。厳しいことを言った人もいますが、それぞれがいい個性を持っています。また、英語力もしっかりとしています。

課題は、これからまとめるみなさんのレポートです。レポートでは、みなさんが教師としても最も大切な資質である

教えることの知識(teacher knowledge)
教えることの学習(teacher learning)
教えることの思考(teacher cognition (thinking))

を見させてもらいます。表面的なことだけを見て、あるいは、物の本に書いてあることをなぞるだけでは、あまり建設的ではありません。ぜひ真剣に研究してください。期待します。

さて、今回の模擬授業についての感想です。

16 SA先生の授業

SA先生は、ワークシートをていねいに作ってありました。ワードリストも親切でした。学習者にはたぶんわかりやすいと思います。しかし、授業の際にも指摘しましたが、その前段階をどうするかが授業の良し悪しを決定してしまいます。つまり、教師が生徒に指導する場合、次のことばが基本です。

してみせ て、言ってきかせて、させてみよ」(上杉鷹山)

つまり、1「してみせて」は、生徒がどう英語を使うのかを実際に示す必要があります。説明だけではうまくいかないことが多いです。2「言って聞かせて」は、基本的に理解しているかどうかを確認して、実際に練習をする機会を持ちます。それから3「させてみよ」です。SA先生は、1と2がありませんでした。これを時間の関係で省略したのですが、ここが教師としての力量が最も出るところです。模擬授業では、その点を生徒役の学生さんたちがカバーしたので、うまくいきました。うまくいったということは、タスク自体は問題ないということです。問題は1と2です。

また、1と2は、生徒の意欲と動機付けとなります。ここの展開が興味ある内容だと思わせることが授業では最も大切です。それと大切なことは、このタスクが教科書の文法や語彙や内容の理解とどう関係するかが、生徒にとっては大事です。活動しながらなおかつ学べるということが理解につながり意欲につながります。ここを計画の段階でおろそかにしてはいけないと思います。私が教科書内容にこだわるのはそれが理由です。

SA先生は、生徒に落ち着きを与えるという印象を持ちました。文法の説明をいままでよくある指導と同じ方法で教えるのはもったないでしょう。発音も上手だし、もっと個性を生かした授業を展開しましょう。教育実習ではその点を生かせばきっと楽しい授業ができます。ありがとう。

17 KE先生の授業

KE先生は忙しかったのでしょうね。アイディアはよいと思いましたが、ちょっと準備不足でした。高校1年生の最後の方で、ある程度高い学力があり意欲がある生徒を対象として考えました。ディベートを理解することが大きな目標です。これが指導案ではディスカッションとなりました。これはそれほど大きな問題ではないですが、最終的にはディベートを指導するようにシラバスを考えなければいけません。ディスカッションはそのディベートのためのブレインストーミングと考えるべきでしょう。

指導案やワークシートはていねいに作ってありましたが、実際には展開することなく、ほぼ頭の中で考えて模擬授業を展開したようです。大学生は対応しましたが、高校生を対象とした場合は、もっとていねいな指導が必要です。おそらく混乱するでしょう。教科書の英文はすべて精読する必要はありません。また、文法についても理解程度にとどめて、発話の中で使うように指示する必要はないと思います。文法と内容をあえて合わせる必要はないし、理解する能力にとどめておくべきことと産出する能力まで発展させることは分けて考えるべきでしょう。

教科書内容について何も理解しないまま、携帯電話についての意見を聞くのは無理でしょう。授業は、たとえ模擬授業でも、やはり流れの中で進めないといけません。その点はKE先生の理解したのではないでしょうか?教育実習では生徒のことを実際に考えて展開してください。

KE先生は、おっとりとした感じで生徒に安心感をもたれるようです。生徒からの質問に対しても親切に対応していました。生徒から質問が出るということは、教師としてはうれしいことです。生徒に質問しやすい雰囲気をつくるというのはできそうでできないようです。けっこう悩ましい質問でしたが、よく答えていました。そのためには、教材研究をしっかりとしておくことは欠かせません。もしわからなければ、調べてから正確に回答しましょう。ありがとう。

18 TR先生の授業

TR先生は介護体験で怪我をしての授業でした。指導案についてはよく考えてあったと思います。雰囲気もよかったです。授業の雰囲気を決めるのは、やはり授業のはじめです。TR先生はそれが比較的うまくいきました。その後の活動に際しての復習から導入も工夫してありました。現在完了の理解を目標として、日本人を考えるという視点も面白かったと思います。ただ展開についてはもう少し工夫する必要があったように思います。再度振り返って考えて、どこがよくてどこが悪かったかを考え、自分で理解できれば、きっといい先生になると思います。

一つ気になったのは、「生徒は手をあげるのがきらいだから」というような一言でした。生徒は意外にわかりません。手をあげるのは嫌いという先入観を持つのはどうでしょうか?授業では生徒に積極的に参加させることが英語の授業の成否となります。生徒には積極的に発言するように仕向けるのも教師の仕事です。たしかに積極的に発言しないかもしれませんが、指導においては、生徒が間違えを恐れずチャレンジする意欲を育てるという観点も大切だと思います。

教科書との関連については、本文の前後関係がわからないので、それも資料としてつけておくことは重要です。それはさておき、本文は、中国の人の日本人に対する印象です。その点からすると、中国に対する印象などについて、日本人と文化的な比較をしてみるとおもしろいと思いました。私が「おもしろい」という意味は、「興味深い」という意味が強いです。中学生も考えている人は考えています。生徒を知的に刺激することは英語学習を通しても重要な課題です。この点もぜひ考えてください。

TR先生は判断力がよいと思いました。教育実習でもたぶん上手にできるのではないかと思います。しかし、実際に教師となるには、もっと教材や生徒について理解が必要です。人と同じことをしていては進歩がありません。また、教えていてもおもしろくありません。ぜひ、未来に向けて英語教育を考えてください。ありがとう。

みなさん、ありがとございました。模擬授業はどうしても不自然な状況です。大学生が中学生や高校生になることは無理があります。教えるほうもその意識は抜けなかったようです。が、よい経験としてください。この経験が生かされるかどうかは、みなさんのこれからにかかっています。期待しています。

いつものことですが、誤字脱字はご容赦ください。また誤解もあると思います。私の感想がすべてではありません。みなさん自身の哲学を大切にしてください。


2014年12月14日日曜日

模擬授業6

模擬授業も6回目を迎えました。授業の良し悪しは別として、みなさんが、英語の授業をするということはどういうことか、具体的にイメージできてきたかどうかがこの授業のポイントです。

人と同じことをする必要はありません。「この指導法が絶対だ」ということもありません。「〜がこう言っているからその指導をしなければいけない」ということでもありません。英語だけで教えなければいけない、ということでもなく、文法訳読が絶対いけないということでもありません。受験のためというニーズは無視することはできません。

英語教育での「英語を教える」という学問とも言えない領域ですが、けっこう奥が深く、やりだすと面白い仕事です。その道に少しでも興味を持って進んでくれるとうれしいと思い、この授業をしています。今回の3人の先生は、多少失敗はあったかもしれませんが、熱心に工夫をしました。それは無駄にはならないし、無駄にはしてはいけないと思います。

以下、感想です。

13 WH先生の授業

WH先生は自分が受けた授業体験をもとに、そこから何か新しい楽しいことをやろうとして、「すごろく(board game)」(写真参照)を活動の中心にしようと決めたようです。教材はたいへんよくできていて、おもしろいものでした。

指導案もよく考えてあり、展開もある程度明確だったと思います。ただ問題は、実際にどう展開するかということの実践の準備が不足していました。教育実習ではこれは絶対にやってはいけません。実際に教師がどう発話して、生徒がそれに対してどう対応するのかを、きちんとシミュレーションしておく必要があります。

教科書の該当ページを用意するのを忘れてしまったという大きな原因は、教科書内容と発展教材としてすごろく活動が関連性が薄いという展開のせいです。教科書と密接に結びついていれば、そのようなことは起こらないと思います。その点で、模擬授業は「授業の流れ」をつかむことが、一つ重要な目的です。「ここで挨拶して、次にこの活動をして、これから今日の模擬授業の展開をします」という設定は、少しやりにくいでしょう。一通り通してやるほうがよかったかもしれません。

日本語と英語の問題ですが、やはり英語を授業の基本言語とすることです。日本語は補足とするように考えるとよいと思います。WH先生は典型的な文法訳読の英語授業を受けてきたそうです。そのイメージから抜け出られなかったと授業後言っていました。この模擬授業でイメージを少しでも理解できれば、価値ある内容となるでしょう。ぜひふりかえりをしっかりして、考えてみてください。

WHさんのこの模擬授業に対する考え方や準備は価値があると思います。この姿勢は教師としては最も重要な要素です。「英語で授業をする」ということはパフォーマンスをすることではないので、ふつうにやればよいのです。話しことばは書き言葉とは違います。気楽に英語を使うことを生徒に示せば、生徒も気楽に間違いを恐れず英語を使います。そうすれば「すごろく」は大成功するでしょう。模擬授業で生徒役の人がやっていた活動が、中学生ができれば、教師は何もする必要はありません。教師はにこにこと見ていればよいのです。

14 OK先生の授業

OK先生もよく準備してありました。教師として重要な資質は、まず正確で適切な英語を教えることです。次に、それをどう生徒に提示し、英語を使う場面を演出するか、です。さらには、英語指導に対する全般的な生徒の学習のサポートです。OK先生はそのような資質はしっかり備わっていて、とてもていねいでアイディアがありました。

問題は、WH先生とほぼ同じことですが、教科書とのつながりをどうするかです。実際に50分授業をするとなると、教科書題材の理解という点からすると課題が残ります。授業は、比較級と最上級の理解と定着の活動に重きを置いた活動になりましたが、タスクが多少不明確だったようです。大学生だとすぐに対応できますが、中学生だともっと明確にする必要があります。また、中学生がやりとりをする状況設定をもう少し自然にする必要があるでしょう。これも実際にやってみると分かります。教育実習ではその点を考えてください。

指導案は、多少混乱があったように思います。指導計画だと、実際に模擬授業で行った活動は、単元のまとめに行うような活動です。3時間目は、教科書内容にそった活動で、目的にもあるとおり、マチュピチュなど世界遺産に焦点を当てるべきでしょう。

全体的には、工夫があり、教師として教壇に立っても、WH先生同様いい先生になると思います。理由は、基本的に「ていねい」だということです。手を抜かずに教材研究をしてありました。教材研究をしっかりしていれば、それほど大きな間違いは起こりません。課題は、実際にどう授業を展開するかでしょう。これはやればやるほど上手になりますが、その際には、第3者の意見をよく聞く、という機会を持つことです。それも具体的にだれかに確認してもらうことです。また、アドバイスをもらうことです。たとえば、比較級と最上級に焦点を当てましたが、活動では、moreと(the) mostだけではなく、high, higher, highestも含んだ内容でよかったと思います。活動はあまり制限してしまうと不自然になり、練習のための練習となります。

タスクデザインを明確にして、活動は可能なかぎり自然に

ということです。WH先生の「すごろく」とOK先生の比較級最上級活動を比較しながら、教育実習での活動を考えてみてください。

15 IR先生の授業

IR先生は、WH先生やOK先生とは少し異なる授業展開を考えました。結果的には失敗でしたが、私はその方向性は正しいと思います。人はそれぞれ好みや個性があり、人と同じことをする必要はありません。ポイントは、なぜ思ったような結果にならなかったかをよく考えることです。次に、ではどうしたら自分が計画した展開がうまくできるのかを工夫することです。

指導案を見る限りでは、英語で展開することを意図したと思いますが、日本語が多くなりました。理由は本人が一番わかると思います。一度授業をだれかを相手に練習していればこの問題は解決されるはずです。

問題は、授業のねらいが少し分かりづらいことです。意図したことはおもしろいのですが、それが授業を通して生徒に伝わっていないことです。授業は流れが大切です。あることを前提にして授業をするというのは危険です。生徒が宿題をしていない場合も想定して計画しなければいけません。本時では、目標を明確にして、イソップの話、本文の話の要点を英語で展開して、生徒の理解を生徒とのやりとりを通してきちんと整理してから、ディスカッションへと進むべきだったと思います。ディスカッションも日本語で行うならば日本語で行い、さいごのまとめの意見を英語で発表するなどとすれば、おそらく無理のない言語活動ができたと思います。

物語の内容に焦点を当てるというのはとても大切なことで、また、それについて考える活動もとても大切です。IR先生の意図はまったく間違っていませんが、それが結果的にうまくいかなかったというだけです。教育実習で同様のことが起こると大きな問題となります。

自分がやりたいことは、多くの場合、生徒がやりたいこととは一致しないことが多いです。まずは、生徒が何を学ぶのかをよく考えてください。また、生徒が英語に興味を持つ、あるいは、生徒が英語が使えるようになる、ということをまず考えてください。それから、

では、自分ができることは何か

を考えてください。人の真似をする必要はありませんが、ひとりよがりになってはいけません。生徒あっての授業です。

多くを考え、教材も絵を描いて準備しました。ご褒美も用意しました。この姿勢はぜったに無駄にはなりません。授業はまずシンプルに考えることが大切です。そのあとにちょっとした工夫です。

1 教科書教材の学習のポイント → 目標設定(多くて3つ)
2 教科書題材の正確な理解とその指導方法の選択 → 展開
3 理解できているかどうかの確認 → 評価方法
4 理解したことの定着のための言語活動 → タスク
5 目標の確認 → ノート整理、宿題

IR先生の方向性は間違っていませんから、さらに考えてみてください。

本日は、3人ともよく準備して模擬授業に取り組んでいました。うまくいった部分もあるし、うまくいかなかった部分もあるでしょう。再度様々な指導法を再度復習し、授業に対する理解を深めてください。

私としては、たいへんおもしろく授業を見ました。考えさせられることも多かったです。あらためて、「教える」ということは一人ひとりの人がどう省察(reflection)するかにかかっていると思いました。私が教えられることは限界があるなとつくづく反省してます。

いつものことですが、見直してませんので、誤字脱字、誤解などご容赦ください。次回も楽しみにしてます。









2014年12月7日日曜日

模擬授業5

模擬授業5回目

この授業も次第に終盤に近づきつつあります。私自身は英語を教え出してからすでに40年近くなります。いつもみなさんの模擬授業を見ながら自分を振り返ります。一つは、私が高校の教員になった頃よりも、みなさんの英語は上手で自然だと思って見ています。その分、中学生や高校生をどのようにイメージして授業をしているかがちょっと不安です。二つ目は、私もそうですが、みなさんがそれぞれ教えることの信条・信念(beliefs)がかなり確立していると思うことです。三つ目は、逆に、ほかの人の授業を見て、表面的に真似をして、無難に処理しようとしているような気がします。これは、たった20分で授業を演じなければいけないので、どうしてもそうなってしまうことが原因でしょう。この授業で実施する模擬授業の限界かなと反省してます。さいごは、みなさんの視点が微妙に違っていることと、コメントなどで意外と本音を言わない雰囲気を感じます。教師に本当になるとしたら、たぶんもっと言いたいことや疑問があるだろうと思います。だれかを批判することではなく、「あれ?この指導はどうなのだろうか?こうしたら良いんじゃないだろうか?」と考えること(考えられること)が、ふりかえり(reflection)であり、この授業の目標です。

さらに、みなさんのレポートでは、やはり科学的な思考(自分の教え方や考え方に対する根拠)が、どの程度加わるか期待したいと思います。

さて、以下は今回の模擬授業の感想です。評価ではありません。

11 AA先生の授業

明るい性格でとてもよかったですね。教師として教壇に立ってもうまくできると思います。ただ授業の時も言いましたが、ごく普通の英語の授業で、教師が陥りやすい間違いがいくつかあったように思います。あまり準備時間がなく、深く考えないでしてしまう典型的な授業となっていたようです。AA先生は、きれいな発音を生徒を元気づける明るさと授業中の判断に優れているので、授業とはどういうものかをしっかりと考えれば、生徒みんなに信頼される教師になれます。その点を踏まえて、改善点を書きます。

一つは、授業を計画する際に、教科書教材をしっかりと理解することです。この授業は単元と呼んだりするシラバスのどこに位置するのか、何をこの授業で学んでほしいのか、語句、発音、文法などについて、生徒がどう理解してほしいのか、などを、きちんと計画しないと、教育実習では問題がおきます。「説明」=「教える」とはなりません。実際の授業では忙しかったりすると、そのようなことは頻繁にありますが、だからと言って、そうしてよいとはなりません。このようなことを繰り返していると何の進歩もないし、この模擬授業も意味がありません。簡単に言えば、「ていねいな指導」です。手抜きはいけません。

二つ目は、上とも関係しますが、かなり大切な部分を早口で説明しました。中学校1年生にはかなり危険なことです。40人いたら理解できる子はごく少数です。大半はわかりません。ただ、これはAA先生は、実際に中学校1年生を前にすればうまくできるように思います。準備をきちんとすればの話ですが。

Presentation 説明ではなく、実際を見せて、理解を図る
Practice  実際に示した表現ややりとりの基本的な言語材料を納得してもらう
Product  応用の場面や状況で実際に一人でできるかどうか試す
     (当然うまくいかない場合は修正する)

ということをきちんと理解していれば、問題はありませんが、誤解しているかもしれません。「模擬授業だからpracticeを省略します」というのは危険です。授業は流れですから、それを省略したら授業は理解できません。

三つ目は、最も大切なことで、文法を目標とすれば、その文法のポイントをきちんと理解するために教材研究をしっかりすることです。中学校1年生ほどしっかりと準備しないととんでもない間違いをおかします。ここでは細かいことは省略します。

Do you have a pen now?
Did you have homework yesterday?

のdoの説明に、『Doは〜するの意味の動詞』『Didは過去の出来事を表す〜したの意味』というようなことがワークシートに書いてありました。これはあまり重要ではない誤りのような気がしますが、かなり重要な誤りです。よく考えてください。

少し忙しい状態でこの授業に臨んだのではないでしょうか?最初にも述べたとおり、AA先生は教え方は上手です。教師を目指せば十分にやっていけると思います。再度自分の授業を見直してください。すべて英語で授業はできた内容です。

いろいろと考えさせられた授業でした。どうもありがとう。

12 IN先生の授業

IN先生は高校1年生のかなりレベルの高い生徒を想定して授業をしてくれました。教えることに慣れているし、かなり熱心に教えるということを考えているので、ぜひこのまま教職ということを追求してもらいたいと思います。もっと深く様々な知識を吸収していくと、将来は日本の英語教育界で活躍するのではないでしょうか?特に、感じたのは、生徒に対する熱意がよく伝わります。「教える」ということの最も強い力は情熱(passion)と言われます。IN先生にはそれがあります。このままがんばってください。

それを踏まえて、少し異なる視点から感想を書きます。教育の領域で現在一番の主流は、「学習者の自律(learner autonomy)」です。それとともに「動機付け(motivation)」です。言語教育では、その点から、多様な分野で使われる多様な言語をどのように学ぶか、あるいは、教えるか、というようなことが、主に注目を集めているように、私は受け止めています。英語教育では、English as Lingua Franca(ELF)として英語の位置付けです。日本での英語教育もその影響を受けて、小中高の英語教師は指導することが求められるようになっています。

その点から考えれば、「英語の授業は英語でする」は望ましいことで、自然な流れです。しかし、文科省も言っているとおり、大切なことは生徒が英語を使うかどうかが問題で、教師が英語で話す、ということではありません。IN先生は、教科書の題材の内容について、生徒とのやりとりの中で理解を深めようとしていました。私はこのようなシンプルな活動は大好きです。ぜひ追求してください。それほどむずかしいわけではなく、とても自然だと思います。私自身も高校で教えているときにそうしていました。大学でもそうです。

その際のIN先生への懸念は二つあります。一つは、やはり高校1年生にはもっと別な観点からていねいな指導が大切です。前段階として、語句の理解の確認、教科書理解のためのなんらかのサポート、音声面の指導への配慮、背景知識の導入などなど、指導段階でのていねいさです。資料などだけでは不十分です。

教師は絶対的な権力を持っていますから、厳しくすれば厳しくできます。「日本語禁止!」は簡単です。いまの若い人の多くはそのような上からの指示に従順ですが、世界的な教育の流れからすると、ちょっとマイナスです。もっと自由な発想や自律性を育てることのほうが大切だと、私は思います。強制されるほうが生徒は意外に楽です。しかし、弊害も出ます。つまり、冒頭に述べた自律が育たない可能性が出てきます。そこをよく考えてもらいたいと思います。英語を教えることの目標は大学受験だけではありません。その先を見るのが本当の英語教師だと私は考えます。

IN先生は、生徒のために多様な配慮をして、よく考えています。間違いなく、生徒想いの情熱あるよい先生です。supplement handoutは自分のためにもよいし、生徒のためにもよいでしょう。このような資料を与えることで、授業活動は英語のコミュニケーションに焦点を当てるということもよく理解できます。指導案を見ると、仮定法はすでに理解していて、語句も理解し、本時は、その本文の内容理解に焦点を当て、生徒に英語で質問し、理解を図るとするという構成のようですが、現実的にはちょっと厳しいようです。20分の授業でその一部を見せるということでちょっと苦労したかもしれません。本時を本文全体の内容理解の復習と位置付け、展開するほうがよかったかもしれません。そのほうが教科書のthesis statementに焦点を当てられたでしょう。20世紀はどうであって、いま21世紀を生きている高校生は20世紀をどう考えるのか?そうすると、IN先生が立てた目標はより明確になったと思います。仮定法にはあまり焦点を当てなくてよかったでしょう。

ということで、二つ目は、仮定法・叙想法(subjunctive mood)についてです。授業では、教科書の内容に焦点を当て、その理解の確認と一人一人がどう考えるかということが主たる目標でした。そこに仮定法という文法が入ったので、焦点が混乱したように思います。私は仮定法はさらっとして、内容に焦点を当てたほうがよかったと思います。そこで別な観点で、文法の扱いについて感想を述べておきます。

文法は重要です。特に「書く」ということに関しては、文法を知らなければ書けません。帰国子女で、英語はペラペラ話せても、書けないという人はたくさんいます。仮定法・叙想法(subjunctive mood)という用語についても、あまり強調する必要はないでしょう。大学受験などではいまでも大きな項目なのかもしれませんが、話し言葉では、基本は、表現を和らげる効果に利用されます。友達同士の会話ではほぼ必要としません。書き言葉でも、文学作品を書く場合には必要かもしれませんが、レポートなどを書く場合にはほぼ話し言葉と同じで、助動詞の一つとして教える程度でもかまいません。聞く場合は、どうでしょうか?これもあまり必要としないでしょう。問題は読む場合です。教科書にも出ているように、読む場合は、特に文学的な作品などではよく出てきます。実際の場合は、様々なビジネスや情報などの文書で、厳密には仮定法ではありませんが、ifが省略された表現は比較的多く使われます。たとえば、

Should you need any help, just let me know.

などの表現はごく普通に使われます。ということで、適宜文書を読むなかで理解を確認する程度で済ませて、授業内では違う活動をするほうが効率的だと思います。このように、文法は教え出すとキリがありません。教師は好きですが、生徒がみんな好きだとは思いません。また、受験に出るとしても、現在は書き換えたりするようなへんな問題はほぼ出ません。出せばそのような大学は批判の対象になるでしょう。

ということで、授業後、「文法指導と本文内容を英語で理解することの整合性はどうなのか?」と質問したわけです。

いずれにしても、IN先生のような人が日本の英語教育を発展させてもらえればうれしいかぎりです。がんばってください。ただし、生徒もいろいろな考え方をするので、一つの方法を押し付けないほうがよいと思います。

おもしろかったです。ありがとう。

いつものことですが、殴り書きです。誤字脱字、誤解などはご容赦ください。不明な点はあとで質問してください。